10 ギルドへの決意
闘技場の試合を終え、街の喧騒から少し離れた場所で俺は黒炎の霊刃を膝に置いて座っていた。
神威が念話で語りかけてくる。
「お主、そろそろ動く時が来たのではないか?」
「そうだな…もう放っておけない」
これまで見ないふりをしてきたが、ギルド幹部たちの悪行が次第に明らかになり、俺の中で燻っていた怒りがついに形を持ち始めた。
奴隷商人との繋がり。
行方不明になった人々。
魔物を利用した呪術――全てに、俺がかつて属していたギルドが絡んでいる。
「お主が動けば、あの連中は確実に慌てふためくだろうな。」
神威の言葉に、俺は静かに頷いた。
「やるべきことをやるだけだ。」
その夜、俺は街を離れ、かつてのギルド本部へ向かう道を歩き出した。
仮面は外し、黒炎の霊刃を鞘に収めたまま、夜の冷たい風を切りながら足を進める。
ギルド本部の門前。
夜闇の中、燭台の揺れる明かりが建物を照らしている。
「ここも随分と変わったな……」
かつて仲間たちと賑やかに過ごした思い出が、一瞬だけ胸をよぎる。
だが、それはすぐに霧散した。
「思い出に浸る暇はない。行くぞ。」
神威の声が俺を現実に引き戻す。
俺は門をくぐり抜け、建物の中へと足を踏み入れた。
内部は以前と大きく変わらない。
だが、感じる空気は違う。
冷たい、いや腐敗したような感覚が全身を包む。
「気をつけろ。ここには普通ではない気配が漂っている」
「わかってる」
廊下を進むと、奥の部屋から複数の声が聞こえてきた。
ギルド幹部たちの話し声だ。
「最近の取引は順調だ。奴隷商人どもも満足している。」
「だが、あの仮面が修羅ではないかという噂が気になる。本当なら、あいつが動き出す前に手を打たないと…」
俺はドアの前で立ち止まり、深呼吸をした。
「どうする?」
「決まっている。叩き潰す。」
俺はドアを蹴り開けた。
驚いた幹部たちの目が俺に向けられる。
「久しぶりだな。」
俺は黒炎の霊刃をゆっくりと抜き、低く構えた。
「お前らのやっていることは見過ごせない。ここで清算させてもらう。」
幹部たちが慌てて武器を取る。
一人が呪文を唱え始めたが、俺は加速魔法で距離を詰め、一瞬でその腕を打ち払った。
次々と襲いかかってくる幹部たちを、俺は黒炎の霊刃で捌いていく。
炎が走り、彼らの武器が弾かれる音が部屋に響く。
「修羅、やっぱりお前だったのか!」
「どうだっていい。」
俺は最後の一人を倒し、静かに剣を鞘に収めた。
部屋に残るのは、倒れた幹部たちと静寂だけだった。
「どうする?これで終わりではないだろう。」
「ああ。まだやるべきことがある。」
俺は部屋を出て、月明かりの下で一息ついた。