4.溶ける少年と妄想少女
「それでは、緊急集会を始めます。」
クリア先生がいつもより真面目な顔でそう言う。
「内容は、いじめについて。いじめがあるという報告がありました。誰がやっているかまでも知っています。それが誰かは言いませんが...。」
ちなみにこの内容は嘘だ。
緊急集会を開くために偽の書類なども作って、本当のようにしたらしい。
「なんていうか、クリア先生って詐欺師みたいなところもあるね。」
「本当に犯罪した事あるのかな...。」
「多分無いだろ。まぁ、異常に手慣れてるのは怖いが...。」
現在3人はそれぞれ場所に着いて、連絡しあっていた。
ライラとアリシアは校庭の端の方。
すぐ捕まえる事が出来るように、準備万端だ。
マヒロは屋上。
雪を降らす係と、上から見て標的の居場所を教える係である。
ちなみに標的が室内の方に行きそうだったら、教師が止めてくれる。
リアルがこの集会は全員聞いて欲しいから、サボろうとした生徒がいたら止めろと言ってあるらしい。
そのため、ライラとアリシアも行動に気をつけなければならない。
「...そろそろ良いかな。マヒロ先輩、よろしくお願いします。」
「任せてよ!3、2、1、起動!!」
その声と同時に、上から雪が降り注いできた。
生徒達は驚きで騒がしかった。
「っ...マヒロ、標的は!?」
「えっと...1年の方にいる!!教師の間潜って逃げるつもりだよ!!」
「1年...こっちか!!」
ライラは辺りを見渡す。
すると、標的を見つけた。
「いたっ...!【反転】!!」
ライラの能力、【反転】。
それは、名前の通り反転させる力だ。
今回は標的を中心とした少しの範囲の重力を反転させたのだ。
「っ...うわぁ!?」
その声がした時には、彼は空高くまで飛んでいた。
「ライラ!能力解除して平気だ!!下に捕獲用の檻と落ちても平気の布も用意した!!」
「オッケー!【解除】!!」
すると、標的は空から落ちて、布に着地した。
そのまま檻の鍵が閉まる。
捕獲が完了したのだ。
「成功だ!!」
「良かったぁ、初依頼成功!!」
「ライラ、お前の能力凄いな。それで能力も反転出来たらもっと強いんだが...。」
「能力を反転して無効にするとかが出来たらとっくにやってます。こんなにやらなくても良かったと思いますし。」
「だなぁ...。そんじゃ、部室に連れて行って話すか。簡易用能力無効結界結晶が1つあったはずだし...。」
「そんなのあるんですか!?使いましょ、早く!!」
「ならマヒロ拾って部室な〜。」
「はーい!!」
そうしてマヒロと途中で合流して大荷物を引き摺り、部室へ向かった。
部室に着くとアリシアは1つの段ボールから結晶を取り出した。
「これをここに設置して...発動!」
そう言うと、小さい結界が出てきて、檻の中に写真と同じ人が出てきた。
「標的、本当に捕まえたんだね。」
「ウチ、頑張ったんすよ!」
「えらいよ、ライラちゃん!!」
マヒロはそう言ってライラの頭を撫でる。
撫でられたライラは嬉しそうな顔をした。
「ねぇアリシア。」
「なんだ?」
「この子妹にしたい。」
「こいつは後輩だ。現実を見ろ。」
「あれ、先輩現実見たくないとか言ってませんでしたっけ?」
「いっ、や、それは、ちょっと違くて...。」
ライラはニコッと笑った。
「本人が認めたので現実がありゃこれから叩きつけてやることにします!」
「嘘だぁ!!」
「あっはは!!」
そう話していると、部室の扉が開く。
「君達ホント、何してるの?」
「あっ、リアル先生!」
「そっか、まだ依頼終わってねぇわ。リアル先生、その人が...。」
「うん、依頼者だよ。」
リアルの後ろには、1人の少女がいた。
「クリアくん!いつもどこ行ってるの?私の彼氏なのにさ、何処かに行っちゃダメだよ!」
「いや、僕は君の彼氏になんかなってないし...。」
「ちょっと、恥ずかしがらなくて良いんだよ!」
「恥ずかしがるとかじゃなくて...。」
2人はどこか噛み合ってなかった。
そこで1つの結論にいたった。
「...ヤンデレの妄想型じゃね?」
「それ思った。絶対迷惑かかってるもんあれ。」
「助ける?」
「うーん...助けよ。その代わりさ...。」
ライラは2人に小さな声で案を話す。
「おっ、それいいな。」
「賛成!じゃあ、やってきな!」
「はーい!【反転】!」
そう言うと、女の子が空を飛び...。
「ぶっ!?」
天井に顔面をぶつけた。
それも情けない声で。
「やっぱり重力が操作出来るのは凄いな。」
「能力が重力操作ってわけでは無いので、そこまで広範囲は出来ないし、長い間も出来ませんけどね。」
そう話していると、女の子はその場に墜落した。
「うっわ、顔赤くなってる。やべぇ...おもれぇ!!」
「痛そー...けど、すっごい笑いが止まらない!!」
「あっはは!!やっぱり面白い事するね、君!!」
「えっ、えっ...?」
3人は笑い、1人が困惑している状況だった。
「君さ、この子に迷惑かけられまくってたでしょ?だから、ウチ等が助けてあげる!ウチ等は何でもお悩み相談部なんだから!!」
「本当に助けてくれるの?嘘じゃない?」
「嘘じゃないよ。ただ君を守るためにはこの部活にいてほしい。ダメかな?」
「君、名前は?」
「僕はルージュ...ルージュ・クリシアティ。」
「ルージュだね。ウチはライラ・プルートー。で、こっちがアリシア先輩で、こっちがマヒロ先輩。2人共3年生。で、さっきいた人が顧問のリアル先生。」
「ちなみに3年の学年主任。」
「嘘でしょう?」
学年主任がまともじゃなくて良いのかと思ったが、それでも学校が成り立ってるならいっかと、考えるのを放棄した。
「怒られた事あるんすか?」
「俺1度だけ怒られた。」
「ヤバいっすか?」
「死んだかと思った。」
「怒らせないようにしよっと...。」
そう話していると、クスッと笑う声が聞こえた。
「なんで笑うのさ、ルージュ!俺が宙ぶらりんにされた話、そんな笑うもんじゃねぇだろ!!」
「すみません!なんか...この空間が良くて。」
「良い?」
「僕、昔から本当の事を言い過ぎて気持ち悪がられていたんです。」
「なんで?別に本当の事言っても良いだろ。気持ち悪くないし。」
「...え?」
ルージュが重い空気にしたのを、一瞬でアリシアが砕いた。
「そうそう。別に本当の事言って笑ってはい終了でしょ!」
「ルージュ、この部活はロクでもない奴が集まってるんだよ。」
マヒロ、リアルが続けてそう言う。
「だから、別にそんな事気にしないで良いんだよ。」
最後にライラがそう言うと、ルージュは涙を流した。
「「「「ようこそ、何でもお悩み相談部へ!」」」」
「...これから、よろしくお願いします!!」
新入部員が1人増える。
また楽しみが増えそうだ。