3.猫を被った氷姫
「はい、倉庫の鍵は開けたから、入って良いよー。」
「リアル先生、ありがとうございます。」
「全然大丈夫だよ。それより、何するつもりなのかな?」
「それは...。」
ライラは口元に人差し指を当て、笑いながらこう言った。
「秘密です。当日を楽しみにしててください。あと、その紙に書いてある事、よろしくお願いします。」
「了解、任せてよ。それじゃ、またね〜。」
そう言ってリアルは去っていった。
「アリシア先輩、ここに使えそうなの、本当にあるんすよね?」
「確かここに...ほらあった。人工雪発生機。」
「本当にあるとは...。」
「にしても、【透明】の唯一の弱点、物にぶつかると戻ってしまうってのを利用するために、雪をばら撒く...か。雪も一様結晶だし、確かに反応する。だが、室内にいる場合はどうするんだ?」
「緊急集会で全校を集めます。そこについてはリアル先生に頼んでおいたので、大丈夫でしょう。」
「準備万端すぎだろ。」
「こう言うのは得意なんで。」
ライラは完璧は嫌いだが、こういうところは事前準備をしたりして、完璧のような結果を作るのが転生前からの癖になっていた。
「それで、雪を発生するには冷たくする氷が必要なんだが...。」
「待ってそれ考えてなかった。どうしよう。」
「大丈夫だ新人。」
「ま、まさか...!」
「あぁ、そのまさかだ。俺に当てがある。」
「最高です先輩!!」
「もっと褒めたまえ〜!」
「とはいえ、当てがあるだけだから引き受けてもらえるか分かりませんけどね。」
そう少し低音で言ってやると、一瞬で顔を顰めた。
「あのさぁ、現実に戻さないでくれない?良いじゃん、先輩に活躍させてもさぁ...。」
「先輩、現実を見るのは大切っすよ。」
「俺は現実が嫌いだぁ...!!」
「現実を見せつけてやるよ、これから色々とな...。」
「ちょっ、マジで悪い顔してるじゃん。やめて、本当に。」
「嘘っすよ!」
「いきなり笑顔になるの怖いなぁ...。」
無駄な会話をしたあと、その当てのところに行くことになった。
「まぁあいつならやってくれると思うぞ。」
「そうなんすか?」
「あぁ。だってあいつも部員だからな。」
「それならやってくれそうだ。」
そう話していると、クラスについたようだ。
ちなみに現在は3-1の教室の前にいる。
「おーい、マヒロ、いるかー?」
「ちょっ、いきなり話しかけないでくださいまし!」
アリシアの声に、ザ・お嬢様みたいな人が反応した。
「えっと、この人が...。」
「あぁ、言ってた奴だ。紹介する。幼馴染の"マヒロ・フルシア"だ。」
「この方は?」
「部活の新入部員。ちょっとお前の力が必要みたいで、会わせに来た。」
「私の力が...?よろしい。一度部室へ。」
そうして部室へ向かう。
その途中は全く喋れず、どこか気まずかった。
部室に着いてマヒロが眼鏡を外して声を出した瞬間、空気は変わった。
「はぁ〜、優等生めんどくさぁ...!」
「お前、猫被り凄すぎるよな、マジで。」
「えっ...え?」
マヒロのお嬢様雰囲気が無くなったのだ。
「それで、君の名前は?」
「え、あ、ライラ・プルートーです。」
「ライラね。さっきはお嬢様雰囲気出してたけど、あれは嘘だから。他の人から良いように見られるためにやってるだけだから。」
「あ、なるほど...。」
「それで、何した良いの?」
「それは...。」
ライラはマヒロに事情を話した。
「氷が必要...そういう事なら任せて。私の能力は【氷姫】だから。」
「それは助かります。」
「それで、いつやるの?」
「明日の朝です。」
「へぇ、明日の朝...ん?えっ、明日?」
「ちょっと待てライラ。それは俺も聞いてないが...」
アリシアも焦った顔でそう言う。
「そりゃあそうですよ。言ったの、リアル先生だけっすもん。」
「マジかお前。」
「ぶっつけ本番...いや、この魔具が動くかどうかくらいはやろう。ほら、アリシア、ライラ、行くよ。」
「どこに行くんすか?」
「そりゃあ勿論、裏庭よ!」
裏庭、それは一部の生徒を除いて立ち入り禁止の場所。
ちなみにその一部の生徒にこの部活の部員は入っている。
地面の整備がされてなく、荒れている場所。
「って、聞いてたんですけど...めっちゃ整備されてません?」
今目の前には地面はしっかり平地で、花壇とかもおいてあるような普通の庭だった。
「あー、それは多分あいつがやったんだろうな...。」
「あいつ?」
「2年の部員。自然を操れる力を持ってるんだ。」
「自然を操る...そっか、地面も自然だから出来たのか。」
「そうそう。ここを教えた瞬間に言っていたんだ。こんな酷い場所、嫌だ。自然を雑に扱うな!!って。」
マヒロがその人の真似をして、アリシアが笑っていた。
どんな人かは知らないが、会ってみたいとライラは思った。
「さて、ちょっとやってみようか。【氷姫】!」
そう言うと、その場が少し寒くなり、機械のゲージがマックスになった。
「これで入ったか...。よし、起動!」
ボタンを押すと、雪が沢山出てきた。
成功だ。
「あとはこれを上から落とせば良いんだっけか?」
「そうです。そのためには明日、屋上の使用許可が必要ですね。」
「そこに関してはリアル先生がやってくれるでしょ。」
「そうだな。俺等の部活の顧問は優秀だからな。」
「ですね。さて...これの設置をしましょう。リアル先生の元へ〜。」
「「しゅっぱっ〜つ!」」
そうして職員室に押しかけると、他の教師にいつも通りだといった感じの慣れた顔で見られた。
そして屋上の鍵を借りて設置。
明日を楽しみに待つことにした。