2.ずる賢い顧問
「それで、何でサボったのかな?」
今目の前には笑顔で怖い教師がいる。
たまにアニメでいる、目が開かない系の人だ。
「入学式なんか、つまらないじゃないですか。」
「それでもさ、君の家系はしっかりしなきゃじゃない?」
「...そうっすね。」
彼女の家系、プルートーの家訓は『完全完璧』。
まぁ簡単に言うと、令嬢やれって事だ。
だが、ライラはこの家訓が大嫌いだった。
「けど、ウチの好きな言葉、『中途半端』なんで。完璧なんて大嫌いなんすよ。面倒な事に縛られて生きるなんて、最悪だ。」
「...普通、小さい頃から『完全完璧』と言われ続けているはずだ。なんで君だけズレたのかな。」
「天才だからじゃないですかね?小さい頃から知識を持っていたから、『完全完璧』以外の言葉を知っていた、とか?」
普通、教師を煽るなんて終わっている行為だ。
成績を減らされて学園生活終了。
だが、彼女は別に気にしない。
転生前は普通の人生を過ごした。
なので、普通じゃない事をやりたいのである。
まぁ、だからと言ってこれはやっていいことではないが...。
「...。」
目の前にいる教師は黙っていた。
怒っているのだろうと思っていると、彼は口を開いた。
「あっはは!そうか...面白いね、君!」
「え...?」
「ん?もしかして僕が怒るとでも?こんな面白い事に怒るわけないよ!僕は面白い事が大好きだからね!」
周りの教師がえぇっと言った顔で2人を見ていた。
まぁ、普通は異常な事だから、仕方がない。
「君さ、僕の担当してる部活に入らない?」
「部活ならもう入るところを決めて...。」
「えぇ、本当に?早くない?」
「サボってたら先輩がいて...。」
「それ、アリシアでしょ?何でもお悩み相談部...僕が顧問してる部活だよ。」
「あー...。」
この人が顧問でなんか納得した気がした。
「入部希望っす。」
「了解、入部届は普通まだ用意しちゃダメだけど...はい、用意してあげたよ。」
「ありがとうございます。あー、名前は...。」
「"リアル・ミルトーネ"。普通はミルトーネ先生って呼ばなきゃだけど、部員だけはリアル先生でオッケーだよ!そっちの方が部員だって分かりやすいってのもあるしね!」
「分かりました。リアル先生、これからよろしくお願いします。」
「よろしくね、ライラ。それじゃあ、試しに部の活動をやってみようか!」
「部の活動...お悩み相談ですね。」
「そうそう。確かここに...はい、これ。」
紙を1枚渡してきた。
そこにはこう書いてあった。
『私の彼氏が見つからないんです!家系専用能力が【透明化】ってのもあって、どこかに行っちゃって...。探してください!!』
これを見て思う。
「悩みってか依頼...。」
「最初はただの悩みだったんだけど、今じゃあ依頼だから、何でも屋的なのになっちゃったんだ。まぁ、別に依頼料大きいから気にしてないけどね。」
「依頼料とかあるんですか?」
「そこの紙の下の方見てみ。」
紙の下の方にはサインがあり、そこの上に依頼料が書いてあった。
「えぇ...多すぎじゃないですか...?」
それは普通にバイトで数日稼ぐよりも多かった。
「これくらいは無きゃ、割に合わないからね。さて、じゃあ頑張ってね。はい、これその彼氏の写真。」
「...了解です。授業は...。」
「サボって良し!こっちで色々やっておくから、気にしないでいいよ。」
「ありがとうございます!!」
そうしてその写真を元に探すことにした。
ちなみに写真の子は無表情の男の子だった。
「すげぇ無表情だなぁ...。この子、一体どこに...ん?透明?」
そういえばと思い出す。
「入学式サボる前に見たな、そいつ。」
透明の力なんてずるいなぁっと思っていた。
それはその能力を使っている奴を見たからである。
「確かあいつ...壁にぶつかって戻ってた?」
壁を登ってる時、壁の方で額をこすりながら透明じゃなくなってたはずだ。
「透明になった状態で物にぶつかると、元に戻る...?」
その結論に至ってからの行動は早かった。
「えーっと確か部室は...あった。アリシア先輩、いますか!?」
空き教室が部室らしく、そこに入る。
そこにアリシアはいた。
「おっ、ライラか。その紙...依頼か?仕事が早いな、お前。」
「顧問に押し付けられただけです。」
「災難だな、お前。」
「そうなんですよ...じゃなかった!ちょっと聞きたい事があって...。」
そうして彼を炙り出す作戦を話した。
「面白れぇ...!俺にも手伝わせてくれ。」
「良いんですか?」
「俺に手伝ってもらいたくて説明したんだと思ったが...。」
「いえ、ただ勝手にやって良いのかと思って...。」
「別に、俺等の部活は何でもオッケーなんだ。下手に荒れても、生徒の悩みを聞いてるから、教師も生徒会も俺等に何も言えないんだ。」
そう言って笑って見せた。
普通に策士というか...。
「ずる賢い。」
「だろぉ?俺等の顧問、異常だからさぁ。」
「やっぱあの人か。」
「けど、怒ると怖いから怒らすなよ。」
笑顔な人ほど怖いというのはどの世界でもそうらしい。
「そんじゃ、あそこに行くか。」
「どこに行くんです?」
「それはね...倉庫だ。」
「倉庫...一体どういうところなのですか、先輩!!」
ライラはいつも通りキャラ変。
そしてアリシアは...。
「廃棄物が多く置かれている場所だ。そこなら使える物が沢山あると思うから、行くぞ、ライラくん!」
意外と乗り気であった。
そうして作戦決行の準備を始めるのであった。