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第1話ジョン・レノンは生きていた
1980年12月8日、冬のニューヨーク。ダコタ・ハウスの前に響いた銃声は、世界を悲しみに包むはずだった。しかし、倒れたジョン・レノンは、奇跡的に息をしていた。銃弾は彼の心臓を僅かに逸れ、命拾いしたのだ。
病院のベッドで目覚めたジョンに、友人たちは静かに告げた。「ジョン、お前はもう、ジョン・レノンという偶像に縛られすぎた。この機会に、別の人生をやり直してみないか?」
彼らの言葉は、ジョンの胸に深く突き刺さった。確かに、彼は常に世間の注目を浴び、その一挙手一投足が騒ぎ立てられる日々に、疲弊していたのかもしれない。
実は、ジョンには誰にも言えない秘密があった。それは、以前から複数の「顔」を持っていたことだ。映画監督スティーブン・スピルバーグ、テクノロジーの革新者スティーブ・ジョブズ。その他にも、知る人ぞ知るサッカー選手や、ひっそりと歌い続けるマイナーミュージシャンとして、彼は既にいくつかの人生を歩んでいたのだ。
ジョン・レノンは、再び訪れた生を、これまでとは違う形で謳歌することを決意する。ジョン・レノンではない彼として。