表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第三章 《過激派陰陽師達、宵闇に蠢く。》
95/226

第91話『明星会 参』



()は完全別行動、か……」


 昼食を終え、いざ実習を開始しようとしようとした矢先、担当教師から移動を命じられた。

 学内ネットの個人ページを確認したところ、俺の今後の予定が変更されていた。

 とある人物との組み手、式神演習。

 ()()との手合わせ自体はかなり久しぶり。

多分、中学以来……とか?

第20修練場。

表示を確認し、中に足を踏み入れた。


「遅い」


「……すいません」


 不機嫌そうに髪の毛先を指で弄んでいるのは、―――――古賀京香。


()()()()が、他の生徒と同じ動きなわけないでしょ」


「ちゃんと確認しなさいよ」そう言いながら、京香は簡単にその場でストレッチを始めた。

 広い屋内の修練場内は、俺と京香以外誰もいない。

 いわゆる……VIP待遇ってやつだろうか。


「俺らで、丸々一つの修練場使って……良いんだね」


「むしろ当たり前。旧型の式神が周囲に与える影響を考えたら当然のことね」


 担当の教員もいないようだし……。


「まぁ、とりあえず準備体操がてら……三本先取ね」


「……!」


 不意に。

 目の前で構える京香の姿が。

 ()()京香の姿と重なった。




 ***




「「お願いします」」


 ムシムシした道場内は、俺と京香しかいなかった。

 古賀本家の道場―――――普段であれば、多くの門下生の覇気のある声が飛び交っているはずだ。

 しかし、今は夕暮れ時と言うこともあり、道場内は静寂が支配していた。

 今はただ、二人の静かな呼吸音だけが、鳴り響いている。



 ―――――古賀流。

 合気を主体とし、カウンターを前提に動きを作る。

 力では無く、『』。

 徒手空拳や剣技、槍術など応用の幅は広く、俺も京香も幼い頃から一通り叩き込まれた。


「……」


 いつ相手の間合いに入るか、呼吸と動きの僅かな機微を読む。

 数刻にも満たない刹那、一瞬の瞬きの間に。

 ―――――京香の姿が、消えた。


「……っ!」


 ほとんど反射的に、上段への蹴りを両手で受けていた。

 しかし、それを見逃す京香ではない。

 空いた右脇腹への追撃。

 体を捻り何とか威力を殺す。


 戦闘における最も大きい隙、それは相手が業を出した瞬間。

 体勢も間合いも乱れに乱れた、今!!

 京香の懐に飛び込み、道着の袈裟を掴む。

 誰の目にもそれが()技の予備動作だと分かる。


「あ……!!」


「よいしょぉ!!!」


 これが、始めて京香から一本とったときの記憶―――――。



 ***



「―――――!!!」


 俺の顔の目の前を京香の健脚が薙いだ。

 足蹴りを主体とした連撃技。

 地面に接地する時間を極限まで短縮することにより、その間合いを気取られないようにして……!

 蹴りを受け矢先、跳んでくる第二第三の蹴り。

 こちらが目で追う速度を、遙かに凌駕している。

 カウンターを完全に捨てた超速格闘。


「『受け』の暇も与えないほどの、『手数』」


「っ……!」


 体勢を僅かに崩されたのを―――――突かれた。

 両の足で思いっきり蹴り飛ばされ、背後へと吹っ飛ばされる。


「いってぇ……」


「よし、三本目。私の勝ち」


 腕を組みながら、地面に転がっている俺を見下ろしている京香。

 ストレート負け、か。

 俺も、動きは悪くなかったように思うんだけど。

 それ以上に京香自身気合いが入っていたとでもいうべきか。


「はぁ……」


 ともかく勝ち誇っている自信満々のドヤ顔に、俺も素直に敗北を認めるしか無い。


「体幹が左に寄りすぎ。重心ブレブレ」


「最近サボり気味だったからなぁ……」


「基礎修行からやりなおし、ね」


「……はいはい」


 頭を掻きながら起き上がると、既に京香は護符に霊力を流し、炎を展開していた。

 お次は、式神躁演。

 となると、俺も使()()()()()


「……」


 懐から真新しい護符を取り出す。

 それは紛れもなく、昨日秋人さんから受け取ったモノに他ならない。

 俺、宮本新太専用に調整が施された固有式神。



「―――――『蛍丸』、起動」



 音声認証の後、手に持った護符が溶けて粒子へと形象変化――――。

 やがて、俺の手に形作られる一振りの白銀。

 諸々の機構は、全て『虎徹』を踏襲している。

 式神の形も、結局一番使い慣れている形が良い。


「発現事象は、やっぱり『加速』派生のものにしたの?」


 確かに、運動制御系の発現事象が一番肌に合っている。

 機構も扱いやすいモノが多いし、術式も頭に入っているが故に躁演の苦労も少ないだろう。

 ―――――しかし。

 先の妖との戦闘で、俺はこれからの自分の戦い方を模索していく必要性を感じていた。

 だからこそ。



 俺が秋人さんに依頼(オーダー)した発現事象、それは―――――。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ