二章『エピローグ』
[南区冷泉 新都タワー15F外階段 21:43]
「……風が、気持ちいいな」
新都の街並みを見ていた。
やっぱり、この時間が一番綺麗。
時折、聞こえる悪霊の嬌声や爆発音はご愛嬌。
霊災前に比べたら、だいぶマシになった。
結局、本能的に陰陽師が一番輝ける時間は夜なんだなと思う。
不意に。
手元の端末が震える。
液晶に映し出された人物の名前を確認し、「通話」をタッチする。
「……はい、夏目です」
電話の内容を要約すると、まゆりちゃんの事に関してだった。
簡単に言うと、「失敗しやがってこのヤロー」という感じ。
むしろ私的には、結構頑張った方だと思うんだけどなー、まゆりちゃん。
上手いこと新型の連中を引っかき回してくれたし。
「はい。
では次に私は?
……はぁ、分かりました。
いえ、多分大丈夫だと思います。場所は分かりますんで。……はい、はい。はーい」
通話を終え、私は階段の手すりに寄っかかった。
ったく、人使いが荒いなぁ……。
ウチはスマホをしまい、代わりに一枚の護符を取り出した。
結構長い仕込みになってしまった。
期間で言えば、大体一年弱。
思考に違和感を生じさせないように、少しずつマインドコントロールを行った。
本当にいいところまでいったんだけどな……。
宮本先輩と共倒れぐらいしてくれれば、立派な戦果として報告できたんだけど。
でもそれは、高望みしすぎか。
「妄想症……、なかなか良かったですよ。
―――――来栖先生」
ほんの少し蒸し暑い、新都の夜の大気を思いっきり吸い込み。
私は、手に持った式神を破り捨てた。




