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序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第二章 《地雷系陰陽師、落ちこぼれに恋をする。》
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第76話『そこには、ただ二人だけ』



 恐らく数日後決行される清桜会の作戦概要、そして()を伝えた後、俺は改めて仁に向き直った。


「来栖の戦力は未知数、何をしてくるかも不透明。

 こちらの被害の規模も分からない」


「……」


「仁、協力してくれ。

 ()()()()()()()()()()()


「……協力することで、俺に何のメリットがあるんだよ」


「……」


「大体、色々と無茶苦茶。

 感情に頼るところが多すぎる。お前ってそんなに感情的な人間だったか?」


「……」


 仁の訝しげな表情を、新都の夜の町灯りが照らしていた。


「……分かってる。これは、ただの俺のエゴだ」


 仁に協力を依頼するなら、理論武装をしても意味が無い。

 この「黛仁」という陰陽師は。

 感情の機微などを細かく読み取ることができる。

 ぶっきらぼうに見えて、他人を慮ることができる。

 短い付き合いだけど、俺自身それは感じ取ることができた。

 だからこそ。

 心の底からの声を、仁に伝えるべきだと、そう思った。





「俺が、()()()()()()()()




 仁は一瞬驚いたような表情を浮かべ。

 そして――――、悲しそうに口をつぐんだ。



 結局、あの時仁から返答を得ることはできなかった。

 俺の言っていることは、筋も何も通っていない、ただの無茶に聞こえたと思う。

 協力を期待する方が、お門違いだろう。




 しかし。



 ***






「仁……!!」



「……」



 狐面の陰陽師は何も言わず、ただかぶりをふり、俺に背を向けた。

「さっさと、決めてこい」

 そう、言われたような気がした。





『状況はプランDに移行。……新太、頼みましたよ』



 俺と来栖を覆うかのように展開される、半径50メートルはあろうかというほどの球状の結界。



 ―――――プランD。

 それは、本作戦の最終段階。

 清桜会の結界班により、俺と来栖を結界内に閉じ込め、外界と分断する。

 俺と来栖の直接戦闘(タイマン)―――――。

 その構図を作り出すのが、目的。

 他でもない、()したことだ。



「閉じ込められちゃいましたね。いいんですかぁ~~~?

 ウチはぁ、むしろ嬉しいですけどっ!!」



 大気中の生体光子を収束させ発生させるものとは異なり、術者数名により霊力を供給し続ける、強固な結界。

 これで結界内での破壊状態が、外部に伝播することはない。

 虎も結界班として、この結界を維持するために、霊力を流し続けているのだろう。

 どこにいるか視認こそできないが、きっと俺の様子を見てくれている。


 結界外では、今も尚、清桜会の隊員が飛来する『双睛』の迎撃を行っている。

 京香が、そして何より仁が来てくれた。

 それだけで、俺は安心できた。





 後は―――――。



『虎徹』を握る手に、力が入る。



「ふふふっ、あははっ!!!!

 あーらたさん!!」



「……来栖」



「ウチ、ホントに新太さんが大好きなんですよ?

 どうして、どうして分かってくれないんですか!!?

 何で、こうなっちゃうんですかぁ!!!?」



 来栖は、涙を流していた。

 喜怒哀楽をごちゃ混ぜにされて、無理矢理外へと絞り出されているかのように。

 感情を抑える術を破壊されて、どこにそれを向ければいいのか、分からなくなっている一人の少女。



「……」



 こんな俺のことを、好きだと言ってくれた。


 ただ、それだけで。



 俺も。



「『ワルサーP38』、起動」


 来栖の右手に霊力が集中し、一丁の拳銃(ハンドガン)がその手に握られる。

 改造式神。

 やはり、まだ持って……。


「ウチ。この銃は、特に()()()なんです」


 ゆっくりと手に握られた拳銃を持ち上げ、俺に見せつけるかのようにフリフリと振ってみせる。


「昔、見ていたアニメのキャラクターが使ってたんですけど。

 そのキャラが、言ってたんです」


 来栖の霊力が充填されるのが、目に見えて分かった。






『―――――狙った獲物は、絶対外さねぇ。

 先の先まで計算立てて、盗みの美学を完成させる。』





 眼前の来栖の姿が、消えた。




 そして、突如脇腹に生じる衝撃。

 熱。

 遅れて襲ってくる激痛。

 流れ出る、何か―――――。

 手で拭うと、鮮血が掌を濡らす。

 玉のような冷や汗が、額に浮かぶ。


 ―――――撃たれた?

 でも、肝心の来栖はどこに。


「……!」


 俺のすぐ斜め背後。

 霊力の残滓から、その所在を予測。

 そちらへ目線を向けると。

 不敵な笑みを浮かべながら、銃口から紫煙を立ち上らせる来栖の姿があった。


 俺の死角への瞬間的な移動。

 通常時であれば知覚することも叶わないほどの


「この『ワルサーP38』の発現事象は―――――、『加速』」


「……!!」


』を、改造して―――――。





「ついて来れますか? ()()()








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