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序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第二章 《地雷系陰陽師、落ちこぼれに恋をする。》
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第75話『火の鳥』



「~~~~~~~!!!!」


 声にならない悲鳴、嬌声。

 来栖の、先ほどまでの恍惚とした表情はどこかに消え失せた。

 瞳は瞳孔が開き、血走った眼を以て俺を真っ直ぐに捉えている。

 ピンク色の頭をガリガリと搔きむしり。

 正気を失うかのように、来栖は発狂する―――――。


『宮本新太』


 突如インカムから鳴り響く声。

 佐伯支部長のものだ。


『こちらはです。……いつでもどうぞ』


 通信が入ったの同時に、視界が真っ白に染まった。

 辺り一帯が数多の大型の電灯で照らされ、まるで昼かと見紛うほどに明るくなる。

 そして。

 俺の背後には―――――静かに鎮座する、清桜会の陰陽師達。

 その数およそ、

 他の任務や、悪霊修祓等で作戦に参加できない数を抜いたとしても、現状投入できるが集結していた。

 背後を横目で確認すると、俺に近くには既に狩衣に着替えたと思われる京香や、制服姿の虎、そして中央には佐伯支部長。

 皆、来栖を静かに見据えていた。


「……あらたさん、ありがとうございます」


「……?」


「ウチ、いらないものは()()()()()()()()


「……」


「欲しいものは死んでも手に入れたいし、いらないものは全力で消しちゃいたい。……そこにいる、『女』とか……!!」


 来栖が指さす先には、京香がいた。


「『清桜会(アンタら)』も全員いらない!! 何もかも!! パパも!! 全部全部!!! いらないいらないいらないいらないいらないいらないいらなあああああああああああい!!!!!!!」


「……!!!」


「はぁ……はぁ……ふふっ、おかしいと思わなかったんですかぁ? 

 ウチがわざわざ学園に足を運んだことも!

 古賀先輩と最後まで闘わなかったことも!

 わざわざ()()()()で逃走したことも!!!」


 ―――――!


清桜会(おまえら)の考えていることなんて、ぜーんぶ知ってんだよ!!!

 ばああああああか!!!!」


「お前らを()()に集めるため!! みんなまとめてぶっ殺すため!! わざとノってやったんだよ!!!!」



 不意に、辺りに爆発音が鳴り響く。

 それと同時に背後から発生する悲鳴と土煙。


「来栖、何を……!?」


「……新太さん。ウチ、気付いたんですよね。()()


「あの時……?」


「……『』。

 Mgを使用したとしても、ウチの予測を超える爆発の規模だった……」


「……!!」


「積んでますよね? ―――――

 多分、情報の漏洩を防ぐために、いざという時には遠隔で自爆できるようにプログラムされている……」


「上!!」


 誰かの、声がした。

 促されるままに上空を見やると。


「……!!!」


 ―――――鳥。

 幾千もの鳥が円環を形成し、小夜の新都を飛翔していた。

 そして。

 今も尚、周囲の空から集結しつつある羽音。



「新都を偵察する半自立型式神『双睛』。

 今、現在稼働しているの制御を掌握―――――」



 先ほどの爆発は、『双睛』を自爆させ攻撃手段に……!!



「……始めましょ? 

 ―――――




『総員、臨戦態勢に移行して下さい』



 佐伯支部長の声を皮切りに、背後の陰陽師達は式神を起動。

 それと同時に炸裂し始める閃光と爆発音。

 始まった―――――。

 上空から、突っ込んでくる『双睛』。

 自爆機能を搭載しているが故に、それは縦横無尽に陰陽師を狙い撃つ。

 それは、まるで戦時中。

 逃げ惑う一般市民の命を刈り取る、無慈悲な煌めき。


「……来栖、やめろ!!」


「……なんで、こんな奴らのこと庇うんですかぁ!!?

 ウチにはこれっぽちも気にかけてくれないのに!!!」


 来栖の感情に呼応するかのように、上空の『双睛』が一斉に降下を始める。


「……!」


 迎撃するには、数が……!


「っ……京香っ!!」


 叫んでから、俺は後悔した。

 京香の発現事象は「自然発火」。

 炎を以て迎撃すれば、その相乗効果は計り知れない。

 要は、更なる破壊を助長する可能性が―――――。











「身内の揉め事は、身内で何とかしろよ」




 金属的な音が、周囲に鳴り響いた。

 時が数刻、秒針を止めたかのように訪れる静寂。

 転瞬。

 新都の上空が、紅く染まる。



 頬を撫でる熱風。

 衝撃波。

 舞い散る『双睛』の残骸―――――。


 そして、俺の隣に舞い降りる一つの()


「……『狐』」



 誰かが、静かに呟くのが聞こえた。




 ()()()()のように。



 狐の面が炎を反射し、紅く染まっていた。




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