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序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第二章 《地雷系陰陽師、落ちこぼれに恋をする。》
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第69話『疑わしきは、』

転職活動が終了しました!

長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。

更新を再開したいと思います。





[6月14日(金) 泉堂学園屋上]



 学内ネットにつないだスマホ。

 そこに映し出されていたのは、紛れもない俺、「宮本新太」のログインページに他ならない。

 朱雀戦、そのブロック予選も佳境に差し掛かり、他ブロックでは既に決勝進出者が決定し始めている現状。

 スマホを操作し、指紋による生体認証を起動させる。

 ふと、画面が切り替わる転瞬、嫌な予感が頭をよぎる。

 そんなわけない、と自分自身に言い聞かせるが、その効果は薄いように思えた。何故ならば。

 ログイン後、俺の目に飛び込んできたのは。

 今日俺と当たる予定だった上級生の名前と、その横に表示されているバッテン。

 それが意味するのは対戦相手の棄権、それによる俺の不戦勝。




 相手の上級生は、昨夜、学校の中庭で頭部に裂傷が生じた状態で発見された。

 そう。

 ()()()()と同じ。

 俺と同じブロックに所属する人間だけが、悉く狙われ、襲撃されている。

 泉堂学園側も看過できない状況に置かれているのは言うまでもない。


「……これで、お前の決勝行きが確定したな」


 俺の隣では虎が寝そべり、張り付けたような作り物の笑みを浮かべている。


「……」


 俺は今日の不戦勝で、六勝目をあげた。

 勝ち点を踏まえると、虎が言ったように俺の決勝行きは自動的に確定。


「……しっかし、どうしたんかね」


「……」


 今朝の被害者は三年生の中でも、なかなかの手練れだったと聞いている。

 無条件応戦が許可されている現状、ただの抵抗もなくやられるとは考えにくい。

 そして、最も憂慮すべきは泉堂学園内で被害者が出た、という事実。

 学園を取り囲むように結界が張り巡らされ、悪霊の類の侵入を許すほど不用意ではない。

 つまりは、泉堂学園内の()()の仕業。

 重ねて言う、悪霊ではない。

 泉堂学園の人間だ。


「一体……、誰が……」


 すると、俺の呟きを聞いて、虎は馬鹿にするように喉を鳴らした。


「おいおい……。新太ぁ、現実を見ようぜ」


 虎から発せられるのは、俺へと向けられるどこか攻めるような視線。

 そう。

 俺の思考は、ただの現実逃避に他ならない。

 結論はとっくに出ていた。




()()()、だろ。どう考えても」




「……」


 あの夜以降、連絡が取れない後輩の少女の名を虎は呟いた。

 分かっていた。

 だからこそ、考えないようにしていた。


 心のどこかで、否定したい自分がいた。



「アンタとの序列戦の前日に、その相手が手負いで発見される。まず間違いなくアンタのためでしょうね」


 虎の向こう側に、腕組みをしながら佇む一人の少女。


「……京香」


「まゆりと連絡がつかない。家にも帰っていない。その連絡をくれた八千代も学校に来ていない」


「新都全域にも、警察による捜査網が敷かれているみたいだぜ」


 秘密裏にな、と虎は付け足す。


「……」


 被害にあった生徒は、皆一様に軽傷ではない。

 数日間の療養で済めばいいが、中には未だに昏睡状態の者もいるという現状。

 事態は一刻を争うのは言うまでもない。


「ついさっき、私にも正式に通達があったわ。

『第一厳戒対象、泉堂学園一年来栖まゆり』……。清桜会も動き出しているわね」


 スマホの画面を振りながら、こちらへと向き直る京香。

 おそらく其の画面に、今しがた京香が口にした内容が、記載されているのだろう。

 清桜会はあくまでも、対悪霊を前提とした治安維持機構。

 被疑者が陰陽師、それも未だ学生であることを鑑みると、清桜会も黙っているわけにはいかないだろう。


「……事実上の指名手配じゃねぇか」


「『服部楓』による大霊災、それに加えて今回の一件……。組織としての存続すら危ぶまれるわね」


 陰陽師による傷害事件の発生。

 事件の調査やまゆりの捜索は秘密裏に行おうとする腹積もりは見えるが、隠蔽を図ろうとしても、いずれはどこかでボロが出る。

 ただでさえ、泉堂学園内ではすでに大きな騒ぎになっている現状、世間に露呈するのも時間の問題。





「……それは、非常に困りました」





 不意に。

 緊迫した空気を断つ、凛とした声が屋上に響き渡った。


「……?」


 声の方向へと目線を向ける。

 屋上入口―――――――――。




「っ……!!」


「……!」


「……?」


 三者三様の反応。

 虎だけは頭に疑問符を浮かべているのがその表情から分かったが、それどころではなかった。

 それもそのはず。

 今目の前にいる、その人物。

 白銀の髪をたなびかせた、色素のない肌。

 有無を言わさぬ圧迫感のある佇まい。


「久しぶりですね、宮本新太」




 いつかの夕暮れ以来の邂逅。



 佐伯支部長が目の前に立っていた。


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