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序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第二章 《地雷系陰陽師、落ちこぼれに恋をする。》
56/226

第54話『恋敵?に出会う地雷系』


 [泉堂学園屋上 12:27]





「虎先輩ってホントに強いんですね~」


「別に~? んなこたぁねーよ」


 当の本人は興味なさそうに、モムモムと菓子パンをほおばっている。

 謙遜とかじゃなくて、心の底からそう思っているんだろうな……。

 ちよちよも、ウチも苦笑いを浮かべながら、各々のお弁当箱をつついた。



 ウチ達は新太さん+αに会うために、屋上に来ていた。

 ドアを開けると、先週のようなヤンキーは、()()()()()いなくて、気だるげな先輩が一人でパンを食べていた。

 虎先輩が言うには、新太さんはちょっと遅れてくる、とのこと。

『先に飯食って待ってよーぜ』という虎先輩の言葉に甘えて、ウチ達もお弁当タイムを始めていた。


「あの式神……可愛かったです!」


 興奮した様子のちよちよ。


「あぁ……()()()?」


 いうが早く、虎先輩は片手で護符を取り出し―――――起動する。

 すると、傍らにポフンという間抜けな音と共に姿を現したのは、つい先ほど序列戦で見た一匹の真っ白なウサギ。


「っ!!! すっごいモッフモフ~~~!!!」


「うわ……、可愛い……」


 霊獣型の式神は結構あるけれど、実際の動物の形を踏襲している物はあまり多くはない。

 ってか、ホントに可愛いんだけど。

 さっき虎先輩がやっていたように、見よう見まねでウサギのアゴ下を撫でてみる。

 すると、ウサギは気持ちよさそうに目を細め、「~~~~~~っ」とよく分からない鳴き声を上げた。


「どうしよう、この可愛い生き物……」


「私もこの式神使いたい……!!」


「愛でるためだけの式神もいいと思うぜ~」


 欠伸交じりにそんなことを言う、虎先輩。





「でもさ、『白兎』ってピーキーな性能なんだよね」


 ……いつ屋上に来たのか、気付かなかった。

 いつの間にか、ビニール袋を提げた()()がウチ達の後ろに立っていた。


「ごめん、遅くなった」


「購買混んでたのか~?」


「かなり、ね。

 みんな序列戦観てるから、昼休憩になると一斉に混むんだ」


 よいしょ、とウチの隣に腰を下ろす新太さん。

 ち……、近っ……!!

 ……ヤバい。

 完全に油断してた。

 髪型とか、メイク崩れていないかな。


「……『結界』の式神、お前いつ練習してたんだ?」


「まぁ、ちょっちね~。できるだけ動きたくなくてさ~~」


 どんだけめんどくさがりなの、この人。

 そういえば、()()()も……。



「……虎先輩、さっきの序列戦中、一歩も歩いていないですよね?」


「おっ、さすが。よくお分かりで~」


 ウチの方を見ながら、パチパチと手をたたく先輩。

 動かずに戦闘を終わらせたいとか……、言うのは簡単。

 それを実行できるだけのがないと、実現はもちろん不可能。

 たくさんある式神の選択肢から『白兎』という式神を選び、術式や機構の解析を行う。

 それを実践でどう使うかは、式神の術者に委ねられている。


「ホントに……、仕方ないなぁ……」


 長い付き合いであるはずの新太さんも、どこか諦めがちに買ってきた菓子パンの封を開けた。







「―――――相変わらずね、虎」




 不意に。

 この場にいる誰のものでもない声が、辺りに響く。

 ―――――女の人の声……?


『っ!!』


 虎先輩のウサちゃんが、耳をぴんと立てキョロキョロと辺りを見回した。

 そして、やがて何かを見つけたかのように、ピョンピョン跳ねてどこかへと行ってしまう。

 ウサギの向かった先……屋上入り口のドア。


 そこに佇む、一人の


「……!」


 その姿を見たとき、ウチは―――――言葉を失った。




「これ、さっきの式神ね? ……ちょっと可愛いじゃない」


 その女生徒の周りを、ウサギはクルクルと走り回っていた。


 ウチは―――――そのを知っていた。

 いや、泉堂学園に所属している人なら、絶対に誰でも一度は見たことがあるし、聞いたことがある。


「……おう、久しぶりだな~、ぁ」


「アンタも、元気そうじゃない?」






 ―――――泉堂学園二学年、序列()

 古賀、京香。

 序列第一位は、長い綺麗な金髪を翻しながら、ツカツカとこちらへと近づいてくる。


「ちょっと、まゆりちゃん!! アレって……だよね!!?」


「誰がどう見たってそうでしょ……! 一体どうしてこんなところに……!?」


 ちよちよと、もはやヒソヒソ話と言えないヒソヒソ話を行う。

 嘘……!!?

 これって、現実……?

 何で粗暴の塊みたいな虎先輩と話しているの!?


「あれ……、貴方達は?」


 ウチ達の姿を見るなり、頭に疑問符を浮かべる姫様。

 うわ、近くで見ると睫毛長っ! 足細っ!! すんごい綺麗じゃん、この人っ!!!

 ってか、オーラがすごい。

 もう、何かキラキラしたものが体から立ち上っている。

 こんな、立っているだけで絵になる人って、いるんだ……!


「う……あぁ……! ひ、姫様……!?」


 目の前の序列第一位は、ちよちよの言葉を聞き、眉間にしわを寄せた。


「姫様……?」


「あぁ、いいえ、違うんです……!

 ウチ達一年生なんですけど、古賀京香先輩の事、かなりというか結構有名で……。

 一年生内で「姫様」って呼ばれてるんですよね、はは……」


「ふぅん? ……貴方達一年生なんだ」


 自分がどう呼ばれているのかは別にどうでもいいのか、姫様……もとい古賀京香先輩は、ウチ達の輪に加わった。


「……遅かったね、


「手続きがめんどくさくて……。復学って書類一枚じゃダメなのね?」


 ―――――新太さんが、下の名前で、呼んでる!!?

 いやいや、ナニコレ。

 新太さん。

 一体何で、序列第一位と仲良さそうなの……?

 ってか、これって一体何の集まり!!?


「序列戦の登録も間に合わなかったし……。タイミングは最悪ね」


 そう言いながら、古賀先輩は屋上柵下の段になっているところに座り、足を組んだ。


「ってことは……、お前もついに一位陥落かぁ~!? ほんのちょこっとやる気出てきたぜ……!」


「……殴るわよ、虎?」


「勘弁勘弁。

 ……いやぁ。

 でもまぁ、そろそろちゃんと紹介しないとな」


「……そうだね」


 虎先輩と新太さんはこちらに向き直り、口を開いた。





 虎先輩と新太さんの関係―――――。

『でもまぁ……、厳密に言うとなんだけどな』と、先週虎先輩はウチ達に言った。

 話を聞く限り、どうやらこの「古賀京香先輩」が三人目のようだった。

 この三人は昔からの付き合いで、色々と一緒に行動していた……らしい。

 ……信じられないけど。


「ってことで、俺らは今でもたまに一緒につるんだりしてるってわけ~」


()()()()()って言った方が正しいかな……」


 虎先輩と新太さんの説明に、うんうんと深く頷きながら聞いている


「次は……、貴方達の番ね」


「っ……!」


 ……一体、何て説明すれば?

 ありのままを伝えるのが、多分筋なんだとは思うけど……。

 新太さんが好きで、アプローチするために一緒にご飯食べてます!とか絶対に言えない……。





「どっちも一年。向かって左は、ちよちよ。右は来栖まゆり。コイツ、新太のことが好きで、多分今日もアプローチしに来てる」






 ウチ「……」


 ちよちよ「……」


 新太さん「……」


 古賀先輩「……」


 虎「……あれ? 何この空気」







 ……全部。

 言われた。

 虎(敬称略)に全部。

 全部、言われた。


 いたたまれなくなり、ウチは思わずその場に俯く。


「あのさぁ……、虎」


 古賀先輩は額に手を置き、静かに溜息をついた。


「……ごめんね、デリカシーない奴で」


「……いえ」



 ―――――もう知ってます。

 コイツがデリカシーのない××野郎ってこと。



「まぁ……、あの……さ。うん、頑張ってね……」



 古賀先輩は憐みのこもった瞳で、ウチを見ていた。

 ウチ、何で毎回毎回こんな思いしてるの……?














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