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序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第二章 《地雷系陰陽師、落ちこぼれに恋をする。》
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第53話『カワイイは強い、を悟る地雷系』



 ウサギを撫でいた手で、――――虎先輩はゆっくりと刀印を結んだ。


「っ……がっ……!!」


 それと同時に、苦しみだす二年生の女子。


「な、何……?」


「これって……、発現事象……!?」






「う……あぁ……!!」


「コイツの真価は、結界の


 虎先輩は刀印を高く掲げ、そして――――。

 前方、つまりは二年女子がいる方向へと向けた。


「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 響き渡る絶叫―――――。

 当の本人は苦悶の表情を浮かべ、苦しみ方がドンドン酷くなっていく。

 そして、ついには手に持っていた二本の刀剣すらも……床へと落としてしまった。

 にわかに騒がしくなる修練場内。


 ……結界の複数同時制御。

 虎先輩は、確かにそう言った。

 ってことは……いくつか、結界を発動させている……?

 二年女子の体の周囲に発生するプラズマ。

 それは結界の接地面が存在していることを意味する。

 この状況。

 そしてこれまでに発生した事象から、仮説を導き出す。



「……あの人、やっぱり強いんだ」


「まゆりちゃん……?」


「あくまでも仮説だけど……。

 防御手段であるはずの『結界』を攻撃に転じてる」


「……?」


「要するに、四つの結界をあの二年生の()させて、その外殻で圧迫……しているんだと思う。……多分」


 あの女の人は前後左右、四方向から同時に結界で押しつぶされている状態。

 結界は術者の霊力に依存しない、という原則はあるけれど、今虎先輩が起動させているのは、


 結界強度を制御しているのは紛れもなく―――――虎先輩自身。



「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」



 ……結界のこんな使()

 ウチは見たことが……。


「棄権しないと、このまま潰れるぜ~?」


「あっ……かはっ……!!」


 呼吸すらままならないほどの、圧迫。

 あの二年女子に、この現状をひっくり返せる手段があるとは……到底思えない。

 ……二本の刀剣も、もう護符に戻っちゃってるし。


「これは……」


「勝負アリ……かな」


 徐々に力が抜けていく二年女子の体。

 その様子に審判も実行不可能と判断したのか、『止め!!!』とマイク越しに試合の中断を宣告した。





 転瞬。


 その場に崩れ落ちる―――――二年女子の体。

 苦しそうに何度も呼吸を繰り返している傍に、二、三人の先生が駆け寄っていく。


「よーし、戻れ」


 虎先輩はその様を見届けて、肩に乗ったウサギの式神を解除した。

 静かに消えてゆく、真っ白なウサギ―――――。


「新太さんの話、大げさじゃなかったね」


「……うん」


 ―――――そこでウチは、とある一つの事実に気付く。

 それは闘った相手の女の人には、酷く残酷な現実だった。





「……一歩も動いていない」


「え?」


「虎先輩、その場から()()()()()()んだよ。

 最初から……最後まで」


 序列戦が始まり、決着がつくその瞬間まで。

 虎先輩は攻撃を回避するどころか、移動すらしていない。


「……」


「さーてと、飯飯~~」


 修練場を後にする気だるげな姿を、ウチとちよちよは言葉を失いながら見ていた。



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