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序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第一章 《序列最下位の陰陽師、英雄になる。》
30/226

第30話『仄暗い闇の中で、』



 冷たい床の感触で、俺は意識を取り戻した。



 暗い。



 ……痛い。

 体の節々が悲鳴を上げている。


 俺はどうなったんだ……?

 京香に、本部で……。

 京香。


「っ……!」


 鮮明になる意識。

 歯を食いしばり、その場に上体だけ起こす。


「ここは……」


 冷たくて暗い場所。

 それに、辺りには異臭が漂い、物悲しげな雰囲気で満ちている。

 痛覚はまだ残っているから、死んだわけじゃなさそうだけど……。


「あっ、起きたんだ」


「っ!」


 不意に、背後から聞こえる声。

 その声音はとても聞きなじみがあり、つい先ほどまで会話を交わしていた。


「……」


 バタンというドアが閉まる音と共に、こちらへと歩いてくる気配。

 そして辺りは僅かながらぼんやりと()照らされる。


 青白い炎。

 それは()()()の発現事象に他ならない。


「京香……」


 いつもと同じ、凛とした佇まい。

 いつもと同じ、表情。

 この状況を巻き起こしたと、仁は言っていた。

 しかし――――――。

 痛む体に鞭を打ち、何とかその場に立ち上がる。


「――――――新太、寝すぎじゃない? ……もう夜中よ?」


 ほんと仕方ないな~と、屈託なく笑う京香。

 その口調は、普段と何も変わらなくて。

 俺はつい忘れてしまい、いつもと変わらない調子で話してしまいそうになる。


「京香、どうしてこんなことを……」


「……」


 京香は俺に背を向け、静かに溜息をついた。


「知ってる? 『燐火』って、元々はお墓とか死体があるところで目撃されていた「現象」だったの」


 京香の手のひらに小さな青い炎が出現する。


「その正体はバクテリアの発光とか、死体から生じたガスに自然発火したものとか、色々言われてきたけど……」


 ポウと京香の周りにいくつもの青い炎が明滅し、そして――――――消える。


「私たち人間も、様々な事象を制御することが可能になった。誰にでもね」


「……」


「だったら、さらに()()へ行ってみたくはないかい?」


「京……香……?」


 ――――――いや違う。


 京香じゃ、ない。

 声音、抑揚、全て京香と同じ。

 でも、違う。

 全然違う。


 これは()()()()








「――――――ようやくお目覚めか」




 気付かなかった。

 気配を感じなかった。

 いつの間にかこの空間には。


 俺と京香のほかに()()いた。



 ゆっくりと近づいてくる人影。

 その顔が、京香の炎で照らされる。



 そして俺は、そのを知っていた。




「全くお前は……、()()()()()()()? 



「……!」




『木偶の坊が来たところで、今日の実習を始める』


『陰陽師とは、力を誇示する存在ではない、()()のことだ。職としての一面もあるが、本来の存在意義を履き違えるな』


 脳内で再現される数々の

 そのどれもが、()として俺を救ってくれたのは言うまでもない。

 一見ぶっきらぼうに見えながらも、その実、俺達のことをちゃんと見てくれている。

 考えてくれていた―――――。



 『……お前も陰陽師志望なら、『自分の正解』を探してみろ』





「…………先……生?」




 目の前には、俺が一年の頃からの、服部楓がいた。




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