24/226
第24話『茜色の中で』
［上総町住宅街 17:34］
仁は夕暮れの住宅街をゆっくりと歩いていた。
新太はこれから道場とやらに行くらしく、早々と帰ってしまった。
夜までの手持ち無沙汰な時間。
何気なく上へと目線をやると空は既に茜色に染まり、どこか物寂しさを感じるような気がした。
「天」
《……何だ》
仁の呼びかけに応じたのは、「天」こと霊獣型の式神、つまりは真っ白な仁の相棒だった。
「新太のアレ、やっぱりそういうことだよな？」
《……恐らく、私もお前と同じ考えだ》
「だよな……」
先ほど目の前で繰り広げられた光景を仁は思い出していた。
霊力のみで起動する式神―――――見たところ、構造も術式も簡易的で、恐らく老若男女問わず陰陽術を使用可能にしたものなのだろう。
その式神を新太は起動することすら苦労していた。
挙げ句の果てに起動すらできなかったが。
―――――俺と天が、新太に感じた違和感。
それは……。
霊力の貯蔵が極端に少なすぎる。
陰陽師云々いう前に、一個体、一人間としての霊力が絶望的なまでに微弱。
まだ生まれたての子どもの方が生命力に満ち満ちている分、マシな霊力を携えている。
陰陽師志望であるなら、明らかにマイナスと言っていい特異体質ではある。
……いや、違うな。
もっと根本的な問題だ。
俺は、以前見たことがある。
あれは言うならば。
不意に。
思考の最中、夕暮れで伸びた一つの影が視界に入った。
仁、そして当たり前だが天のモノではない。
視線を前にもどすと、仁の進行を遮るかのように、誰かが立っているのが分かった。
そして。
その人影と初対面じゃないことに気付き、仁はゆっくりと口を開いた。
「……俺に、何か用？」
