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序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第五章『驕り高ぶる陰陽師達、“王”を名乗る。』
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第187話『仮設第弐部隊』




『清桜会新都支部内に、敵性勢力の霊力反応!!

 仮設第弐部隊は至急、現場に急行されたし!

 繰り返す、仮設第弐部隊は現場への急行を!!』


 けたたましい警戒音の背後で鳴り響く迫真めいた女性の声。

 外から外気が勢いよく吹き込み、まゆりははためく制服や髪の毛を押さえつける。

 しかし。

 視界のど真ん中に鎮座する、『狐』から視線を外すことはなかった。

 始めに会ったときと同じ。

 どこか飄々としていて、神出鬼没に出現する――――それはその名前の通りさながら、……狐。


「……おい」


「……!?」


 まゆりと、面の中の瞳が交錯する。


()()()()()()()、って感じか?」


「――――!」


 ――――……一体何?

 この人は元々得体の知れない、新太さんや古賀先輩と協力関係にあった……ってだけの人。

 ウチは最初から信用なんてしてない。

 でも――――。




「お前、『狐』か……!?

 何で、どうして、こんなところにっ……!!」


 表情を歪ませながら声音を震えさせる流星。

 その問いに応えるかのように、『狐』の纏う雰囲気が変容する。


「……お前、『北斗』だな?」


「……!!」


「ツラも、発現事象も割れてる。

 ……清桜会(おまえら)もバカだよな。

 あんな毎日、メディアに引っ張り出して」


「っ――――だから何だってんだ!!!

 顔を衆目へ晒してたのは、万が一()()()()()()があっても、俺らが負けることがねぇからだよ、馬鹿がァ!!!!」


 滾る霊力を全身に充填し、光球を周囲へと顕現させる流星。

 末那識により、妖に匹敵する霊力を手に入れた――――現代陰陽道の誇る研究成果の結晶。

 それ故の、最高戦力――――『北斗』。


「オマエをぶっ殺して、も殺す!!

 俺は『北斗』っ!!!

 他のカス共とは違うんだよォ!!!」


 流星の言葉に引っかかりを覚えたのか、『狐』の霊力が僅かにその揺らぎを停止させる。


「新太……?」


 流星の咆哮に、静かに眉間に皺を寄せる一人の少女。


「――――そんなの、アンタには無理だもん。

 『狐』も、新太さんも、アンタよりもずっと強いから!!!」


 眼に見えて流星の額に浮かぶ青筋。

 まゆりとの楽しみを邪魔された――――、それだけで流星の精神状態は大きく掻き乱されていた。

 それが、当のまゆり本人の発言で臨界を迎える――――。


「っ――――んだとこの、クソアマァ!!!」


 光球の一つが揺らめき、至近距離にいるまゆりへとその霊力の波動が向けられる。

 それは、明確なまでの

 不敬の輩を断罪する一撃に他ならない。


「……もうオマエ、死ねよ」


 まゆりの視界が、白銀に染まった。


「っ――――」


 炸裂音と眩い閃光が、再度清桜会新都支部を揺らす――――。



「ひゃはははははははァ!!!!

 死ねよっ!!

 死んじまえクソがァ!!!」



 デスクやPCの残骸が散乱する破吏魔待機室は、既に部屋としての体裁をしていなかった。

 コンクリートが剥き出しになり、周囲から白煙を燻らせているのを横目に、流星は更にその霊力を滾らせる。




「――――仲間にも、()()向けんのかよ」


「……!!」


 砂塵が外へと吸い込まれ、破壊の全容が明らかになる最中。

 流星は二つの人影を見た。



「な……んっ……!」


 全身を純白に染めた狐面の陰陽師。

 その背後に驚いたように目を見開いている、来栖まゆり。


「何で、()()を庇って……!!」


 ――――気に食わねぇ。

 拳を強く握りしめる流星。

 それは、どこかで感じたことのある感覚。

 俺の一挙手一投足を()()()()()()ような。

〝王〟であるはずの『北斗(おれたち)』を、糾弾するような。


 面の奥から見える、瞳。



「っ――――上等だァ!!!

 焼き殺す!!!

 一片の肉片も残さずに消し去ってやるよ!!!」


 流星が吠え、『狐』から純白の霊力が発揮するのとほぼ同時――――。











「久々ね、――――仁」


 凜とした声が、辺りに響き渡った。





 清桜会新都支部支部長佐伯夏鈴は、先刻北区へと派遣した小隊に現在保有しうる清桜会の全戦力を()()()()()()()

 別働隊として戦力を分断したのには、()()()()()を想定したが故のこと。

『暁月』のによる、手薄になった清桜会新都支部への奇襲――――。

 妖を戦力として保有しうる『暁月』の全物量が未知数である以上、それを最重要の懸念事項としておくことは、佐伯の中ではごくごく自然なことだった。






「――――京香か」


 砂塵の中から現れる、()

 先頭に佇むのは他でもない、金色の髪の毛をはためかせた戦姫――――古賀京香。


 その背後には、流星同様に眼前に出現した殲滅対象への警戒を高めている複数の制服姿。


 仮設第弐部隊。

『北斗』第三星「廉貞(れんてい)」、工藤春臣(くどう はるおみ)

『北斗』第五星「禄存(ろくぞん)」、美波有栖(みなみ ありす)

『北斗』第六星「巨門(こもん)」、明智流星(あけち りゅうせい)

『北斗』第七星「貧狼(とんろう)」、鷹羽真幌(たかば まほろ)

『破吏魔』隊員、古賀京香。


 そして――――。


「――――総員、戦闘用意」


 一振りの大鎌を携えた、白銀の髪を揺らしながら悠然と歩みを進める、一人のパンツスーツ姿の女性。


 ――――清桜会新都支部支部長、佐伯夏鈴。



 14:24。

 仮設第弐部隊、現着。










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