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序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第四章《陰陽師―――――、消失。》
134/226

第128話『鬼人降魔』



 一条寧々の装纏体、『叢雲(むらくも)』。

 狩衣を纏う部分は一条家相伝の十二天将『太裳』の術式が甲冑化していると前述した。

 しかし、頭部に顕現する()だけは、式神に依らない一条家特有のによるものである。


 ――――――『鬼人降魔(きじんこうま)』。

 一条家成立の黎明から研究が進められた、身体能力強化・呪怨顕在化の陰陽術。

 能面を依り代にすることで肉体を鬼人と化し、対象への怨嗟怨恨を呪いに転じる。




『ヴァアアアアアアアアアァァァァァァアアアアアァァァァァ!!!!!!!!!!』



 おおよそ人のモノとは言えない咆哮が、周囲の大気を震わす。

 十二天将とは明らかに異なる()

 仁自身も見るのは

 一条家前当主、つまりは寧々の父親の『鬼人降魔』を幼き頃に目撃して以来。

 ――――――確か……、『呪撃』だったか。



 鬼人となり、魔を降ろす。

 とはいっても、別に降霊の類の陰陽術ではない。

 特定の条件を満たした際に、発動できる条件付きの身体能力強化術に他ならない。


『――――――ニクイ』


《……!》


『ニクイニクイニクイニクイニクイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイィィィィィィィィィ!!!!!!!!』


 陰の生体光子(バイオフォトン)――――――!

 それを『太裳』で増幅させて……!


『シンデ』


《……!!》


 すぐ横で声がした。

 咄嗟に右腕で受けた瞬間、その威力に違和感を覚える。

 ――――――弱すぎる。

 先ほどまでの『太裳』で威力を累乗倍された一撃とは明らかに異なり、まるで破壊力が……。


《……!!》


 感じた違和感。

 それは威力だけではなかった。

 目線を攻撃を受けた右腕に送ると、右肘から手の指先までが元通り()()()()()に変化していた。


《これは……》


「成神」が、解除され……。


『ラァッ!!!!!!』


《……!!》


 再度、狙われた右方――――――――。

 成神化の解除された右腕で受けざるを得な……。

 寧々の右ストレートが仁に達するまでの僅かな逡巡。

 仁は自身の身に生じた、()に気付いた。

 先ほど、寧々の打突が触れた部分の成神が解除された。

 その解除された部分。

 ――――――その部分に、霊力が充填できない。


《っ――――――!!!!》


 それはもはや、と言っても差し支えなかった。









 何かが、弾け飛ぶ音がした。



『カワイソウ、ジンカアイソウ、フフッ』



《――――――っ》



 無い。

 右肘から下が、無くなっていた。

 絶え間なく流れ出る鮮血が、水面を紅く染め上げていた。

 生身で、十二天将術者の一撃を受けきれるわけがなかった。


 これが―――――、『呪撃』。

 自身の怨嗟を呪いに転化し、攻撃を受けた対象に一時的な特殊効果を付与する。

 寧々の『呪撃』による特殊効果は――――――、霊力充填の阻害。


『シネ』


《―――――――!!》


 寧々の姿が、消える。

 そして体の節々に生じる衝撃と違和感。

 それはまさしく、『呪撃』によって生じたものに他ならない。


『シネシネシネシネシネシネシネシネエエエェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!』


 寧々の怨嗟怨念怨恨の全てを、仁はその身一身に受けていた。




 ――――――仁、そろそろ定刻だ。




 天の声が、頭に反響した。



 ()は、これで終わり。

 仁は左手で刀印を結び、そして――――――。



《成神、解放》




 ()()()





 転瞬。

 真っ白な閃光が結界内を照らす。




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