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序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第三章 《過激派陰陽師達、宵闇に蠢く。》
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第102話『追想 陸』



 ―――――なんだ、これ。




 僕の両の手から、日本刀がスルリとすり抜け、地面へ落下。

 乾いた音が、周囲に鳴り響いた。



 




 ゆっくりと視線を背後へと向けると。

 目を見開きながら涙を浮かべ、丸腰でその場にへたり込んでいる楓。

 そして―――――。


「与一っ!!! 

 いやああああああああっぁぁぁぁぁああ、与一ぃ……!!!!!」


 既に()()()を手に、泣き叫ぶカリン。


 そして、僕の目の前には。




 ―――――無残に横たわる、下半身。


 辺りには夥しいほどの鮮血が飛び散り、臓物のようなものが散乱している。

 鉄と腐臭を混ぜ合わせたような、神経に障る匂いが立ちこめ、ただひたすらに不快―――――。


『オマエらモ、今喰っテヤルカラナ。

 安心シロ』


 ボロボロの頭巾のようなもので全身を包んだ小柄な体躯。

 時折見える顔面は醜く歪み、そこから発される声は年寄りのように嗄れている。





 ―――――霊力の底が、見えない。

 僕らとは、存在するが違う。


 僕も、楓も、カリンも。

 その場にいる全員が、戦意を喪失していた。

 闘う意志を砕かれていた。



 これが、(あやかし)―――――?




「……無理、だろ」


 僕らに、どうにかなる相手じゃない。

 相手にするというのもおこがましいほどの、圧倒的なまでの―――――。



 動けない。

 全身が石になってしまったかのように、動けない―――――。

 何か、黒いものに飲み込まれるかのように。

 神経の一本一本まで、浸食されていくかのように。


 動け。

 動け。

 動け。

 動け。

 動け。

 動け。



「あ……」





 僕の目の前に。

 


 ―――――迫る口。






 ***





 あの日僕らは、同じ絶望と後悔、無力感を味わった。

 でも……、楓。

 君はきっと、僕やカリンとは()()()を視ていたんだろうね。


 だからこそ、僕らの道は違えてしまった。

 求めるものが、ズレていった。



 僕は。

 そんな君に。

 何かをしてあげられたのだろうか。


 



 今も、僕は――――――分からない。


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