3:有名人を助けただけなのに有名税を支払うことになる話
翌日、通学途中にSNSを眺めていると、俺が芒野こっこを助けたことがネットニュースとなって拡散されまくっていた。
『史上初の裏ダンジョン配信! だけどそこには既に先客が!?』
『裏ダンジョンの洗礼に絶体絶命の人気配信者! 颯爽と現れる謎の冒険者……!』
『謎の冒険者、芒野こっこのファン説浮上!?』
そして最悪なことに、見出しの画像には、ガッツリ俺の顔面が抜き取られてる……。記事に対するコメントも、俺の正体を考察するもので溢れかえっていた。
ネット上で顔出しはしていないから、速攻で身バレすることはないだろうが……マジか……。
俺の肖像権どこいった……?
てか学校行ったらバレるくね? いや、ワンチャン知らぬ存ぜぬで通せるか?
一応、ダンジョンでは防具つけてるから、制服姿とは見た目の雰囲気が結構違うので、他人の空似が通る気がする。
この二年間、誰ともダンジョン内で遭遇しなかったのも身バレを防ぐ重要な要素だ。怪我の功名ってやつだな。
……そもそも、最初から裏ダンジョンなんて潜ってなけりゃ、怪我も何もなかったわけだが……。いや、そのおかげで、芒野こっこを救えたと思えば、やっぱその功績はデカい。
今はもう視聴していないにしろ、芒野こっこは俺の中でかなり重要な位置にいる。彼女がいなかったら……彼女の配信を見ていなかったら、冒険者にはなっていなかっただろうし、もし彼女がダンジョンで死んでいたとなれば、俺はショックで、立ち直れなかったかもしれない。
うん、大丈夫。
あの行動に悔いはない。
身バレもきっと、なんとかなる。だって俺はそもそも、最弱冒険者としてあざ笑われていたのだ。それが裏ダンジョンで芒野こっこを助けた人物とは、誰もイメージが湧かないはずだ。
よし。いざ登校!
――そして俺は、今まで散々バカにしてきた奴らに、もみくちゃに質問攻めを受けて、その日は高校を早退した。
身バレ回避、失敗したっぽい……。
そんな今日も、俺はダンジョン・ダイブをやめない。
いや、そんな災難な日を送ったからこそ、俺はダンジョンへ潜らなければならないのだ。
ダンジョンで、モンスターと命がけの戦闘を繰り広げる。まだ見ぬ先の階層へ心を躍らせる。
そんな体験が、嫌なことをすべて忘れさせてくれるんだ。
「あ! きたきたあ! 待ってたよっ! 山本カズキくん♡」
そして、待ち構えていた芒野こっこに、俺は出待ちされていたのだった……。
咄嗟に逃げようとして背を向けて……。
「ええ!? どうして逃げるの!? 私はお礼が言いたいだけなのにー!?」
そんな言葉を聞いて、ぴたりと立ち止まる。
いや、お礼を貰いたいわけじゃない。
……なんで、俺の名前知ってんの?
「え? 俺、名乗ってないよね?」
「あーうん。なんかね。同じ学校に通ってるっていうリスナーさんが教えてくれたんだー」
「俺のプライバシーどこいった……?」
聞いたことがある……。
これが、アレか。
有名税ってやつか……。
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