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【完結】押しかけゆうれい嫁と御曹司の夫婦生活の事情。  作者: 路明(ロア)
6 夜中の結婚宣言と幽霊じゃなくなったさくら。

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「いきなり一足飛びでお父さまに宣言とか」


綿貫(わたぬき)さんからお聞きしました。わたしも説明を求められてちょっと戸惑いましたが」


 おんざきコーポレーション系列のイタリア風バー。

 蝋燭(ろうそく)に似せた明かりが照らすカウンターで、清水がオン・ザ・ロックを口にする。

 綿貫って誰だっけと一瞬思う。

 さくらの親父さんのことかと思い出し、陽真(はるま)は話のややこしさにうんざりとして項垂(うなだ)れた。

「プロポーズを条件に提示はしましたが、いきなり一足飛びでお父さまに宣言とか」

 清水がクスクスと笑う。

「頑張りましたねえ」

「てめ……」

 陽真は父の秘書を睨みつけた。

 バーテンダーが、注文したカクテルをスッと横に出す。

「部下に指示して、さくらを階段から突き落としたとかじゃねえだろうな」

「いくらわたしでもそんな犯罪まがいのことはしませんよ」

 犯罪スレッスレのところは指示しそうだけどなと陽真は内心で突っ込んだ。

「それで、さくらさんは」

「頭は打ってないようだってさ。本人が言ったとおり肩打ってたらしくて、(あざ)できてたって言ってたけど」

「痣で済んで幸いでした。お大事にとお伝えください」

 陽真はカクテルを口にした。一口だけ飲んで、ゆっくりとテーブルに置く。

 何がお伝えくださいだ。

 どうせそのうちさくらと直接話すんだろと思った。

 もしかしたら診断結果もすでに知っているのかもしれない。

「形はどうあれ約束だ。統真(とうま)の情報よこせ」

「ああ、そうでした」

 清水がオン・ザ・ロックを口にする。

「……あんた、とぼけて反故にするつもりだったんじゃないだろうな」

「しませんよ。録音までしておいて」

 清水がふたたびクスクスと笑う。

 何が愉快なんだかなと思う。陽真は、カクテルをグッと飲み干した。

「統真さん、お勤めになっている不動産を移ったのはご存知でしたか」

 陽真はわずかに目を見開いた。

「いつ」

「去年ですね」

「それで?」

「どうも引き抜きで移ったようです」

 陽真は、カクテルを飲もうとした手を止めた。

「ご存知でしょうがヘッドハンティングと違って、引き抜きは基本的に違法です。発覚すれば会社間の裁判沙汰にもなる」

「会社との契約内容にもよるけど、うちは確か辞めるさいも退職金は出ないんだったかな」

 陽真はそう答えた。

「なので、同業に移ることは前の会社では言わなかったそうです」

「ま、言う馬鹿はいないわな」

 陽真はカクテルを口にした。

「むしろ、それを陽真さんに知られたら不味(まず)いから逆に陽真さんの弱みを探っていたのかと」

 成程な、と陽真は目を眇めた。

「外見だけでなくやることまで似ていて、本当にお二人とも微笑(ほほえ)ましい」

 清水がクスクスと笑う。

「うるせえよ」

 そう陽真は返した。

 そもそもがこういう手口は、自身も統真も主にこいつから教わっているのだ。

 そりゃ似てもくるだろう。

「ちなみに引き抜いたやつは割れてんの?」

「大学時代のお友達ですね」

 清水が答える。

「まあ、以前の不動産は粉飾決算をしている節もあるので、長くはない可能性もあるのですが」

「なにそれ、やっば」

 陽真は顔をしかめた。

「統真さんも、いざ以前の会社と揉めたらそれを盾にする計算がおありだったのかもしれませんね」

「引き抜きと粉飾決算とじゃ、どっちかっていったら後者の方がやべえわな」

 陽真はカクテルを口にした。

「事故物件の流行りで潤ってるってセリフで違和感はあったんだよな。前の不動産は、事故物件なんか隠しそうなとこだったから」

「どうですか? 陽真さんの “副業” には充分対抗できる情報だと思いますが」

 清水がオン・ザ・ロックを口にする。

「……まじ想像を越えてた」

「お役に立てて何よりです」

 清水が答えた。





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