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【完結】押しかけゆうれい嫁と御曹司の夫婦生活の事情。  作者: 路明(ロア)
2 御曹司の兄弟と薔薇の花束

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「あたし跡継いだ方のものになる感じ?」

「俺もこれでようやく自由に恋愛ができる」

 統真(とうま)が嫌な感じに笑った。

「誰かと付き合おうもんなら、清水に嗅ぎつけられて結婚のお膳立てされて、なし崩し的に跡を継ぎました状態にされるの予想ついたもんな」

「誰が家庭持った。ガセネタだってさっき言ったろうが」

 陽真(はるま)は睨み返した。

「さくらさん」

 統真がさくらの方を向く。

「さくらさん、いま陽真と内縁みたいな関係なんでしょ?」

「えっと……」

 さくらがこちらを見る。

「見ろ。本人だってはっきり答えられないじゃねえか」

 しばらくしてから、さくらがにっこりと笑う。


「でも、はるくんのことは大好きですよ?」


 男二人で毒気を抜かれて童顔の顔を見た。

「……ええと」

 統真が前髪を掻き上げる。

「でもさくらさん、自分の夫がただの会社員より、大企業のトップの方がいいでしょ?」

 さくらがこちらをじっと見る。

「大企業トップの嫁の方が幸せかもな。統真が継いだあとに統真のところに押しかけろ」

 陽真は兄の方に向けて(あご)をしゃくった。

「お前、最低だな……内縁関係にまでなっておきながら」

 統真が顔をしかめる。

「何とでも言え」

「親父は跡継ぎはお前とすでに決めたんだよ?」

 統真が言う。

「ガセネタで決定してんじゃねえ」

「えっとつまり?」

 さくらが両手で自身の髪をつかむ。頭を抱えているような仕草だ。

「あたし跡継いだ方のものになる感じ?」

 兄弟そろって目を見開き、さくらの顔を見た。

「……何でそうなる」

「ええと……さくらさん?」

 統真が米噛みに手を当てた。

「ごっ、ごめん。ハブとマングースみたいなすごいの見たから混乱しちゃって」

「……ハブとマングースから離れろ」

 こいつの頭の中がよう分からんと陽真は思った。

「ユニークな方だな、陽真」

 統真がいまだ困惑から抜けきれない様子で苦笑する。

「いつでもくれてやる」

「こいつ最低ですね、さくらさん」

 統真がさくらに同情したかのような顔をする。

「そんなことないよ? はるくんはとっても優しいですよ?」

 さくらがにっこりと微笑む。

 兄弟二人、またもや力が抜けた。

「それよりお兄さん、お座りになりませんか? お茶淹れます」

 さくらが小首をかしげて言う。

 三人そろって立ちっぱなしだったことに気づいた。

 六畳和室にパジャマの男とコートをはおった男が睨み合って立ってる光景は、なかなかシュールだ。

「はるくんも着替えて。それからにしよ? ね?」

「あ……ああ」

 何かペースを乱されて、陽真はそう答えた。

 統真と目が合う。

 「とりあえずどうぞ」という風に統真がぎこちなく手を差し出した。

「はるくん、脱いで脱いで。お兄さん、失礼します」

 さくらがかいがいしくパジャマを脱がせる。

 何じゃこの展開という顔で統真が複雑な表情で眺めた。

 いつもならこの兄弟喧嘩は延々と続いて、ハラハラと様子を見守る者はいても止められたことなどないのだ。

 さくらが棚から部屋着を取り出す。

「はるくん着替えてて。お茶淹れてくる。それからにしよ? ねっ?」

「ああ……」

 統真の顔をチラッと見る。こちら同様、調子を狂わされたような顔をしていた。




 さくらが急須(きゅうす)で淹れたお茶が好きだというので、面倒くせえやつと思いながら買った急須と緑茶の茶葉。

 コーヒーカップにその緑茶を注ぎ、さくらはちゃぶ台に運んだ。

 いちど台所に戻り、コップに活けた薔薇を持って来てちゃぶ台の真ん中に置く。

「……あの。ちなみになれそめは」

 正座した統真がそう尋ねる。

「ある訳ねえだろ」

 陽真は眉をよせた。

「あたし、突然ここにいちゃって」

 にこにことしながら、さくらがそう話し出す。

 統真が当惑したように眉をひそめた。

「お部屋まっくらだし、え? なにここ? え? なになに? って思ってたら、横にはるくんが寝てて」

 統真がこちらの顔を見る。

「知らんがな」と陽真は内心で返した。

「で、寝てるはるくんに、ここはどこですか? って聞いたら、はるくんが行くとこないなら、ここいれば? って」

 統真が「解説しろ」という表情でこちらを見る。

 陽真は無視した。

「親切な人ですねって言ったら、はるくんが寝返り打ちながら、別にって」

 さくらが不意に頬を染めて口元を押さえる。

「なんかこの人、格好いいなあって思っちゃって。そしたら実在しててびっくり」

 統真が無言で眉をひそめる。

 陽真もいちいちツッコむのに疲れて緑茶を飲み下した。

 いがみ合ってきた大の男二人をよく分からんペースで戦意喪失させるとは。こいつ最強だろうか。





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