表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】押しかけゆうれい嫁と御曹司の夫婦生活の事情。  作者: 路明(ロア)
序章 幽霊の嫁と盛り塩と味噌汁

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/51

あの世で聞いてんのかおい。


 さくらの姿が消えて、二週間が経過した。


 昼休み。会社近くのコーヒーショップ。

 すっかり若葉だけになった桜並木を眺めて、陽真(はるま)はまた溜め息をついた。

 社員食堂で食べてもいいが、今まで手作り弁当を持ってきてた男が急にコンビニ弁当となると、女性社員たちがあわれみの視線を投げてるように思えて心地悪い。

 ふだん喋る機会もなかった二、三人の女性社員がどうでもいいことを話しかけてきたが、慰めようとでもしたんだろうか。


 取り憑いてた幽霊がいなくなったくらいで、そんなに人恋しそうにでも見えるのか。


 エスプレッソを口にする。

 ミルクを入れ忘れていたのを、飲み干してから気づいた。

 道理でいつもより苦すぎると思った。

 どうでもいい、そんなこと。

 はぁ、と溜め息をついて、スマホの検索バーを親指でタップする。

 まだ検索していないワードはあっただろうか。

 桜、さくら、二十歳前後、県内病死、病死、事故死、県内事故死、おくやみ、お悔やみ、夭逝、若い子病死、新規墓地、墓石業者……。

 家事やってんのが阿呆みたいに楽しそうだったから、家事関連のブログでもやってたかもしれない。

 家事、家のこと、料理、和食、煮物、弁当、タコさんウインナー、弁当プチトマト、洗濯、洗濯糊、洗濯ノリ……あと何だ。


 パンツの洗濯。


 何度も検索したワードをまた検索してみる。

 検索で出てきたブログはおおかた読んだが、さくらを思わせる記述のあるものは見つからなかった。

 ユーチューブの家事関連のチャンネルまでいくつもチェックした。

 おかげでおすすめが家事関連だらけになったが、さくららしき人物が出ているものは見つからない。

 顔を出さずに手だけ出演している動画も、手の特徴やら動きがさくらと似たものがないかジッと見たが、さくらの小振りの手と思われる手は見つけられなかった。


 弁当の画像をアップしているブログをチェックする。

 

 弁当くらいなら自分で作れないこともない。

 ここのところ弁当関連のブログと動画を見まくったので、以前よりもスムーズに作れるんじゃないかと思う。

 女性社員に変に勘ぐられてるとすると鬱陶(うっとう)しいので、弁当作ろうかと思ったが、さくらがまだいる偽装工作してるみたいで格好悪いのでやめた。

 だいたい、大の男の弁当にタコさんウインナーだのプチトマトだの可愛らしいものを詰めるから余計に目立つんだろが。

 そう脳内で(なじ)ってみる。


 まあまあ美味い弁当だったと思う。

 まあまあというか、わりと。

 けっこう。


 かなり美味かった。

 

 陽真は店内の時計を眺めた。

 昼休みはまだ三十分近くある。

 県内の病院を検索し、まだ問い合わせをしていない病院に電話をかけてみる。

 二、三度の呼び出し音で、受付の女性が出た。

「お聞きしたいんですが……」

 「はい」と受付の女性が感じよく応対する。

「そちらで、さくらという名前の二十歳前後の女の子が死亡したりしてませんか」

 受付の女性がしばらく黙りこむ。

「ええと……お身内の方でしょうか?」

「ちなみに身内というと、どのあたりまでって解釈すれば」

 あちこちの病院にかけるたびに尋ねているセリフだ。ここ二週間、飽きるほど問い合わせた言葉を陽真は口にした。

「まあ……ご両親とかご兄弟、問い合わせに応じられるとしたら、あとはご主人とか」


 ……相手に押しかけ女房やられてましたが、押しかけられた夫あつかいにはならないですか。


 そう聞きたいところだが、さすがに阿呆だろうかと思われそうなので、やめる。

「あの……単なる友人とかでは」

「そうなりますと、ちょっと……いちおう個人情報というか」

 受付の女性が困ったように返す。不審をいだいた感じが含まれてそうだと陽真は感じた。

 ストーカーか嫁に逃げられたDV夫とでも思っただろうか。

「お忙しいところすみませんでした。失礼します」

 そう言い通話を切る。

 いつものクセで何となくビジネス的な言い方をしてしまったことに気づいた。いっそ雑誌の掲載内容の問い合わせとでも言った方がスムーズだろうか。

 また溜め息が出た。

 いってみれば不法侵入していたのはさくらの方なのに、何でこっちがストーカーか何か扱いでものを言われなきゃならん。

 腹立つ。

 お前のせいでモヤモヤが止まらんだろうが。

 あの世で聞いてんのかおい、と頭の中で悪態をつきながらまたスマホを手に取る。

 もはや惰性で、まだかけていない病院の電話番号をタップしていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ