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一晩頑張って考えました絶対に付いて行きます!

 翌日、朝食終わりに私はネロさんに決心したことを伝えます。


「私も付いて行きます。聖国へ」

「…………」


 洗い終えた食器の片付けをしながら私達は言葉を交わす。


「アリサがそこまで関わる理由は無い。昨日の晩に言ったように封印(これ)は俺の問題だ」

「行きます!」

「この村で修行するんだろう? それを中断してまで付いて来なくて良い」

「行きます!」

「封印が壊れたことに責任を感じる必要は―――」

「行きます!」

「……昼食は何にする?」

「行きます!」

「…………」


 ネロさんから何を言われようと私の意志は変わりません。大聖霊様にも誓いましたし絶対に付いて行く所存です!

 断られるのも目に見えていたので私はネロさんを説得する理由も頑張って考えたんですよ! 意見を通す時はとにかく相手の言葉は二の次にして自分の言いたいことを言えば良いとムジトットさんが教えてくれました!


「ネロさん!」

「行きます以外喋った」

「エリザヴェータ様にお目通り願うなら私が居れば話が早くなります!」

「……何?」


 アピールです。私を連れて行けばこんなにもお得ですよと、そう納得出来る理由を伝えるのです!


「聖国に居るエリザヴェータ様はそれはそれは厳重な警備の元、聖霊宮(せいれいぐう)の最奥でお眠りになっています。普通の人ではお声を聞くことはおろかお姿さえ見ることは叶いません。聖女や聖者も例外では無く寝所の扉の前に行くことでさえ多くの手続きが必要になります。例外と言えば法王様や六聖人のご当主様方ぐらいの物」

「……その話の通りならアリサの助けを借りても結局は時間が掛かるように思うが?」

「今質問に答えると考えてきたことを忘れそうなので話を続けます」

「えぇ……」


 徹夜して考えました。うっふっふっふっふ……久し振りですよこの頭が重いのに今直ぐにでも走り出せそうな出所不明の元気が湧いてくる感覚。


「きっとネロさんが直接向かっても門前払いを受ける可能性が高いです。そのすごい力で無理矢理押し通るにしても騒ぎが大きくなるでしょうからエリザヴェータ様とゆっくりお話しする時間も取れない筈です。それは封印をお願いしなければならない都合上とても困ります。困りますよね? きっと困る筈です」

「…………」

「ですが! もしネロさんが私を連れて行ってくれるなら! 私はそれらの問題を解決出来ます!」


 こう言っていますが自信は有りません。だけど今大事なのはネロさんが私を連れて行くと決めてくれることです。もしかしたら駄目な可能性も無いことも無いというか大丈夫だったら良いなあって思いますし考えれば考えるほどに不安になってきますが今は無視しましょう。

 私はネロさんに問題を解決出来る理由を伝えます。


「実はお友達に上の方々と深い繋がりが有る人が居て、その人にお願いすればきっとエリザヴェータ様へお目通り出来るよう取り計らってくれます!」


 他力本願です。セシルどうか私に力を貸してください。友達の家の権力を利用するので心苦しいです、ごめんなさい、許してくれるでしょうか? これからお願いの手紙を書いて送るのが怖いです。


「どうでしょうかネロさん! 私を連れて行ってもらえればきっとお役に立ちますよ!」


 さあ、私の覚悟を受け取ってください! もういっぱいいっぱいなので色々と限界です! ここまでネロさんがどんな反応をしていたのか全然見られて無いのが怖さに拍車を掛けています。

 ネロさんの返答は如何に?


「じゃあその友達だけ紹介してくれれば良いぞ?」

「……ぴ?」

「アリサがその者に口利きしてくれれば俺一人で行っても問題無くなるだろう?」

「…………」


 ひええぇ、ピンチです。

 あれだけ頑張って考えたのにネロさんに通用しません。何が駄目だったのでしょうか。挫けそうです泣きそうです。


「ま、まあ先ずはその友達とやらに聞いてみれば良いんじゃないか? その者が無理と言えば結局は意味が無くなるのだから」

「……はい、そうしてみます」


 ネロさんに励まされた私は重苦しい疲労感に包まれながらも何とかそう応えるのでした。





 私室に戻った私は引出しに仕舞っていた物を取り出します。


「……これの出番のようですね」


 それは一通の便箋。つい先日届いたセシルが私宛に送ってくれた髪油(ヘアーオイル)と一緒に入っていた物。


「すいませんセシル。早速使わせてもらいます」


 手紙を書くなら挨拶や近況から入るのが普通ですが……今回に限っては省略します。これを使う際は伝えたいことを率直に書くようセシルから言い付けられたからです。

 私はペンにインクを付け、そして聖気を込めながらその便箋に文字を記す。


『お願いが有ります。』


 一行目に書き出した文字、それがまるで燃えるような光を放つ……これでセシルが持つ便箋の()()()に書いた文字が届いた筈です。

 これは【妖精の手記】と呼ばれる稀少な便箋で、原理は知りませんが2枚一組(セット)になったこれはどれだけ遠方からでも聖気を込めて文字を書けば両方に同じ文字が記されるようになっています。だから2人で一枚を使ってやり取りする形になるので出来るだけ率直に用件を伝えるようにします。


「返信がいつになるかわかりませんが……とにかく用件を書いて―――」


 セシルは高位聖女になっているので多くの責任を抱えて忙しい筈です。なので私は用件だけでも書いてまた時間が空いた時にでもセシルの返事を確認しようと考えていたのですが……

 二行目、空欄だったそこに光が発生した。


『用件を書いて。』


 浮かび上がった字はセシルの物でした。

 早い。早過ぎてちょっとびっくりしました。もしかして偶然この手紙を手に取っていたのでしょうか? でもこれなら話は早いです。


「えーっと……『エリザヴェータ様に会わせたい人が居ます。直接話をさせたいのです。』……これで良いかな?」


 書いてて思ったのですがやっぱり難しいですよねこれ。いくらセシルがキュアノスのご息女で高位聖女だからと云って―――


『わかった。―――』


 二つ返事でした。私が書き終えた瞬間に返事が浮かび上がりました。それにびっくりしている間に続く文字も浮かんできます。


『―――村を出発する日と聖国までの移動手段が決まったら書いて。それに合わせてお目通りの日を取っておく。』


 おお、どんどん話が進んで行きます。すごいです。流石はセシルです……でも順調に進んだからこそ私はある問題を意識することになりました。


「『ありがとうございます。』……ううん、どうしよう……やっぱりネロさん1人だけですよね」


 私も付いて行きたいのですが上手い理由が思い浮かびません。ネロさんが言った通り直接用が有るのは彼だけなので私なんかがお目通りするもっともな理由が無いのですよね。

 うんうん唸りながら言い理由が無いかと考えていた時でした。セシルからの文字が浮かびます。


『アリサも一緒に来ること。でなければ許可は取らない』

「……おお」


 望外。何と何と渡りに船とはこのことです。私が何かしら理由を考えずともセシルからとても都合の良い言葉が来たではありませんか。嬉しいです、これで胸を張ってネロさんとご一緒出来ます。


「ありがとうセシル。『わかりました。その日、私も一緒に行きます。それではどうかお願いします』……よし!」


 書き終えた私は早速このことをネロさんに伝えようと机から離れます。あ、この便箋もちゃんと片付けなくちゃ。妖精の手記は余白が無くなるまで使えるので大事にしないと。

 そうして便箋を片付ける直前、最後にセシルから送られた文字が浮かびます。


『待っている』


 待っている? はて? セシルが居るのは王国なので聖国に行っても居ない筈なのですが……まあ細かいことは良いでしょう。

 私は足取り軽くネロさんの元へ向かうのでした。

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