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第一章 8.獣人と人間と魔術の関係②(回想

 あの時、ソウシはヤケクソになり呟いた。


「“光よ”」


 すると、魔法陣の上にぽわっと小さな明かりが灯ったのだ。


「いや、できんのかーーーいっ!!何だったんだよ!何だったんだよ、ここまでの流れ!!てか、何でできた!?詠唱もデタラメなのに!?いや、むしろ何で今までできなかったん!?いや、ほっんと、俺のここまでの気持ち返して??」


「うん。ついでにお姉ちゃんの努力と覚悟も返して?ポリシー捨てるとこだったんだよ??めっちゃ頑張って治療詠唱探してきたんだけど?どういうことかな?もしかして、構って欲しくて、できないなんて嘘をついていたのかな??」


 ラスカが何かを話しかけていたが、それどころではない。

 そう、魔術が使えたのだ。使えないと諦めかけていた、異世界人だから無理なんだと思っていたあの魔術が!半年の努力が報われたのだ!自分は無能じゃなかったのだ!!


「いぃぃよっしゃぁあ!!!こっから!こっからだ!こっから俺の冒険は始まるぜ!Fooooooo

 !!」


 叫んだ、とにかく叫んだ。叫ばずにはいられなかった。薄暗かった部屋が、色褪せてた世界が、全て綺麗に色付いて見えた。絶望から解放された清々しさが、喉を駆け抜けていった。


「はぁ、まぁ良いかな!ソウシくんが」


「“光よ”!」


「喜んでくれたなら」


「そいやぁ、次は“ルーモス”!」


「お姉ちゃんも『“灯火よ”!』嬉しい『“ルミナス”!』なぁって!流石に落ち着こうかぁ!?」


 そこでソウシは一息ついた。

 落ち着いた、というよりも単純な息切れだったが。


「はぁ、すみません!“輝け”!はぁ、でも!嬉しくって!“煌めけ”!だって、光が出るんですよ!“光彩よ、化身となれっ”!っは流石に無理か。でも、凄い!本当に……。これでっ!やっと!!」


 ぐちゃぐちゃの行き場のない感情が目から溢れていた。安心なのか、嬉しさなのか、解放感なのか。もう何もわからなかったが、とても清々しかった。リコス村に来てからずっとソウシの中にあった罪悪感と劣等感など様々な抑圧された感情も一緒に溢れ出す。そこには、爽やかな笑顔が涙と共にあった。


 その光景を見ていたラスカは。嬉しそうな、微笑ましいものを観る様な、そんなさっきまでの笑顔とは違い。


 無表情でじっとソウシのことを見ていた。


 その唐突な表情の変化に、ラスカらしくない表情に、どこか気味の悪くなったソウシはおずおずと尋ねる。


「ラスカさん?……えっと。その、嬉しかったんで、つい調子に乗っちゃいましたけど、やっぱり、まずはお礼をするべきでしたよね……?本当に、感謝して」


 そこで遮る様にラスカは言う。


「ソウシくん、もう一回。今の魔法陣を使ってみてくれる?」


 少々唐突な要求であった。

 もしかして、何か問題でもあったのか。実はぬか喜びで、自分が発動したのは魔術なんて大層なものではなかったのか。そもそもの問題、勘違いしていただけで魔術なんて使えていなかったのか。そんな可能性が頭によぎる。

 だが、ともかく確かめる為にも言う通りに魔方陣を使うしかない。

 戸惑いながらも、再び魔法陣で魔術を発動した。


「え?あ、はい。“光よ”?」


 先ほどと全く同様に、ぽうっと小さな灯火が灯る。

 ソウシからは特に問題はない様に感じるが、出力が小さすぎるのであろうか。


 魔方陣の光が消えると同時にラスカは言う。


「もう一回」


「……え?“光よ”」


 全く同じ様に、魔法陣の上に小さな火が灯る。

 そして、また……


「もう一回」


 ラスカが繰り返す。まるで、何かを確かめる様に。

 何度も同じ動作を行うのは少々面倒ではあるものの、もし何か異常があるのであれば知りたいという気持ちもある。特に疑問も持たずに言われた通りに繰り返す。


「“光……よ”?」


「もう一回」


「“光よ”」


 数度続いたところで、またラスカは腕を組み何かを考える様に真顔で押し黙る。その時、何か肌がチクっとする様な、ピリピリとする様な少し不快な感覚がした。

 しばらくして、ラスカがもう一度要求する。


「じゃあ、これで最後にもう一回」


 そう言われた時、明らかに先程とは違う空気を感じていた。この空気は“物理的な空気”の違いだ。威圧感などの雰囲気の話ではない。密度が上がった様な、急に重くなった様な酷く張り詰めた硬い空気に変わったのだ。例えるならば、真夏の湿度の高い炎天下の中で光化学スモックが発生した時が近いだろうか。あの、息を吸うだけで苦しい感覚。少なくとも温度も湿度も変わっていないはずなのに。

 とはいえ、だから何だという訳でもない。ただ息苦しいだけである。危害はなく、自分は魔法陣を発動するだけで良い。そこに何の支障もない。


「“光よ”」


 ラスカはまた同じ様に魔法陣を発動するソウシをジッと見つめて、何か小さい声で呟いた後、唐突にいつもの満面の笑顔に戻った。


「へぇっ!すっごい!すごいよ!ソウシくん!やったね!これで色々できるよ!教えた甲斐があったってものよ!いやぁ~、一時はどうなることかと……。これだけ頑張って教えて成果が出ないとちょっとねぇ。……うん、本当に凄いよ」


 後半の発言に、やっぱりちょっとどうかと思われていたんだ!っと少しショックを受ける。

 ラスカは基本的に良い人で正直でもあるのだが、言い換えれば本心を隠すのが下手で少々配慮に欠けるのでは?っと思うソウシであった。ちょこちょこ本音がグサグサと心に刺さってくる!

 それに加えて、何度も魔術を発動したのは何だったのか、何も言及しないということは問題無しと捉えて良いのか、後は純粋に褒められて嬉しい!など様々な考えが頭を巡った結果、混乱したソウシは最終的にこう返した。


「お、お勤めご苦労様です……?」

「……?ありがとう?」


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