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【第2部 始動】蛮鬼―安寧ト絶望―  作者: 松浦 雀
第2部 初陣 ≪The first attack≫
18/20

File.12 先輩

 

「「すげっ!なんでも置いてあるじゃん!」」


 わたし達は基地にある食堂へ、松本さんに連れていかれた。

 そこでは自由に何でも食事を選択できるらしく、わたしは迷わず近くにあったお餅をお皿に取ると、席に戻った。

 わたしの大好物はお餅である。そのまま食べても良し、しょうゆ、みそ、納豆、キムチ、柚子胡椒、きな粉、あんこ‥‥etcなんでも合う。


 それぞれが好きなものを取ってきて一番最後に、欲張りすぎて何を取ればいいのか分からなくなり無難なカレーに落ち着いてしまった千夏が戻ってくる。

 まだ松本さんの言っていたペアの人は来ていない。


「「いただきまーすっ!」」

 みんなで手を合わせて一斉に食べ始める。


 いきなり今日から仲良くしましょうって言われたって、すぐには雑談なんかを振ることが出来ないので自然、無難な食べ物ネタを振ろうとして松本さんのお皿を覗き込んだら、流石に驚きの声が漏れた。


「ん?どした?」


 きょとんとした顔で首をこてんと少し捻る可愛らしいしぐさをして彼女はわたしに聞いてくる。


「いや、松本さんもまさかお餅を取っているとは思わなくて‥‥」


 そう聞いたら、合点のいったような顔を彼女は浮かべる。


「あぁ。なるほど。確かにお餅取る人、少ないよね。‥‥って藤宮さんもそうなんかい!初めて何でも取っていいって言われてお餅取る人見たわ。感激。」


 なんかお餅論争が始まったのでげんなりしたような顔で千夏が漏らす。

「えぇ‥‥よりによって最初の話題がお餅かよ」


「何を言う!お餅はコスパが良いんだぞ!たくさんの食べ方があるし、何よりおいしい!」

「そうそう!ここまでストライクゾーンが広い食べ物なんて他にはお米ぐらいしかないんだから!何と一緒に食べてもおいしいんだし」


 鼻息を荒くして話し始めるわたしと松本さん。

「みんな何で焼いても変わらないとか言うけど、オーブントースターで焼いた時とレンジで焼いた時は全然違うし、フライパンでバターと一緒に焼いたってまた違ったものになるし。」

「あら、藤宮さんよく分かってるじゃない」

「松本さんこそ。本当に好きみたいですね」


 同じ共通のものを好きとする特有の空気がわたし達の間に流れる。


 このお餅論争のおかげで場の空気が(変に)なごんだせいか、松本さんも自然にわたし達の話に入ってきた。

 5人での話がひと段落したところで(ちなみにお餅論争が終わった次の話題はうどん論争だった)、わたしの背中を向けている方向の、食堂の出入口から、声が聞こえた。


「ごめ~ん。待った?」

 誰だろう。なんか一言も言葉を交わしていないのに不思議な空気を否が応でも感じさせられる。ほんわかしているけど、どこかはかれないような感じ。つまり物凄く変わった雰囲気の女の人。


 松本さんが頭をあげると、お、と言った後に続ける。

「咲久、遅かったね。もう食べ始めちゃった。早く取ってきて食べよ」

「うん。わかった~」


 彼女が食べ物を取りに行ったところで話再開。

「いまやって来たあの子が、あたしのパートナーをやっている飛鳥咲久って言うの。詳しくはこっちにやって来たらね。」


 そう言っている隙にもうその話題の彼女は食べ物を取ってきた。早っ


「お前、ほんと取って来るの早いな。ちゃんと考えて取ってきてるか?」

「うん。きょうはこれかな~って思っちゃったんよ」

「お前なぁ‥‥

 あ、そうそう。ここにいるこの子たちが昨日言った、新メンバー。自分で自己紹介してよね」


「ほぇーこの子達が‥‥

 じゃあ自己紹介するね。わたしは飛鳥(あすか)咲久(さく)。16歳だよ~

 咲久って下の名前で呼んでいいよ~

 ええっと‥‥好きな事は、ぼーっとする事かな。えへへ。あと、好きなものはゆみみん。あ、ゆみみんっていうのは侑実(ゆみ)のこと。よろしくね」

「最初っからそんなこと言わんでくれよ‥‥ってかそのあだ名だけは浸透させるの、やめてくれない?他のは何でもいいからさ。」


 そう松本さんが言った瞬間に咲久の目がキラリと光る。

「え!何でもいいの!じゃあもっとすごいの浸透させにいこっかな」

「そ‥‥それはやめてください、咲久サン」


 にっこり。

「まぁそれは冗談として、」

「冗談かよ!」

 思わず突っ込み炸裂。


「ゆみみんのこと、よろしくね。この子、変に頑張っちゃうからさ。あと、松本さんって呼ぶのはやめたげて。下の名前で呼んであげるといいよ。なんか距離置かれているみたいで、後輩ちゃんになつかれたい侑実ちゃんはさみしいんだとさ」

「そこまで言わないでくれ‥‥恥ずかしい‥‥」


 驚くほど耳真っ赤。

「あとねあとね――

「(恥ずかしさで見悶える)」

「昨日、夜にわたしの寝るところに潜って来たかと思えば、『明日会う子達、どんな子かな』なんて言っちゃったりしてそれはもうすごく楽しみにしてたんだよ」


 さっきまでのわたし達と急接近しようとしている先輩としての威厳は残念ながら、もう無い。

 でも代わりにむき出しになった彼女の人間らしさが、とても良いと思った。

 そして、可哀そうだけど気になるからある事をやっぱり本人に聞いてみちゃう。ニヤニヤしながら。


「今の話、全部ホントですか?侑実センパイ」

 顔の赤さを必死に隠そうと手のひらで隠しながら答える、松本さん改め侑実先輩。

「ぜんぶ‥‥本当です」


「そうでしたか‥‥それでは、よろしくお願いします、セ~ンパイ」

「よろしくです、センパイさん」

「お願いします。侑実先輩」

「同じく、よろしくお願いします。先輩」


 みんなもわたしに続いて、ごあいさつ。という名前の先輩いじり。

「君たち‥‥ここじゃなかったら頭ぐりぐりの刑だぞーっ!」


 そんなこんなでわたし達グループの中に侑実も入って来ることとなった。また、そのついでに咲久もわたし達と行動を共にすることになった。


「わたし達ちょっと話するから、先に戻っといて」

 みんな食べ終わると侑実はそう言って咲久と二人で食堂に残ったままさっきの部屋で待っているよう、わたし達は戻された。


 ~~~~~~


「今日は、ありがとうな。いっぱい助けてもらっちゃった」


 あたし、松本侑実は咲久と二人っきりになった瞬間、こう言った。

「どういたしまして。これぐらい、お安い御用だよ。でも、わたしは背中推しただけだよ。最後はゆみみんの力だけであの子たちと友達になったんよ。」


 話は昨日へと戻る。


 昨夜、後輩が出来る、という話をしたときにあたしはある心配を彼女に打ち明けた。

 それは、どうやれば話しかけられるんだろう、という点。

 彼女たちは多分午前のうちにはあの事を聞いちゃって、気分は絶不調間違いない。そんな人たちに対し自分は声をかけられるのか、ましてや彼女たちとの信頼関係を築き上げることは出来るのか。そんな不安が溢れだして止まらない。

 元々、あたしは話好きではあるが最初の一言が声をかけるのにすごくためらってしまう。最初の掴みで失敗したら、と考えちゃうのだ。


 それを、咲久はいとも簡単に解決してくれた。お昼を一緒に食べて、彼女がみんなの中にあたしを溶け込ませてくれたのだった。そして、少しだけ憧れていた先輩という立場になれた。

 彼女のおかげで自分の立ち位置を確立できた。


「本当にありがとう。忙しいだろうにな。そろそろ戻んなきゃ。あいつらが待っている」

「ゆみみんの為なら地球の裏からでもやって来るよ。頑張れ。ゆみみんファイトー!」


 先輩という言葉の重みを感じながら咲久への感謝を伝えると、みんなが待つ会議室へと戻った。





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