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おせんべいも食べるし
「いやいや、いただきます。」
父はまだバスタオルを肩にかけたままテーブルに座した。彩音は黙々と音華と自分の湯呑へもお茶を入れた。そのタイミングで母はせんべいを袋から大皿へと出した。
「まだ食べるの〜?」
「お茶請けは欲しいでしょ?ね、彩音?」
「うん。」
「…じゃ、アタシも。」
「よく食べるな〜。」
「お父さんもね。」
家族そろってお茶をのみ、バリバリと大きな音を立ててせんべいを食べた。こんな穏やかな気持ちになれたのは、彩音にとっては久しぶりのことだったように思われた。