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お茶はなんとか入れるんだけどさぁ、
彩音は黙々とお茶の用意を進める。最初に注いだ父の湯呑みから少し冷めたお湯を急須に入れる。母の湯呑みからもお湯を急須に入れ、そして急須をゆっくりとやさしく揺らす。約三〇秒の間揺らしたら、まずは父の湯呑へ少し、そして母の湯呑へ少しとお茶を注ぐ。澄んだ薄い緑色が美しく、母と娘たち三人全員が目を細める。そこへ父が風呂から上がって来た。
「…お父さん、ビールがいいけどなぁ。」
「まぁまぁ、湯上がりのあつ〜いお茶、おいしいわよ。」
「じゃああたしに頂戴よ!でがらしと換えてあげるー!」