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で、母との会話なんだけどさぁ、
母は彩音と腕を組んだ。いつもならすぐに腕を解いて少し距離を置く彩音だったが、このときはなぜか抵抗する気になれなかった。少し遠くの、少し大きめのフレッシュスーパーまで母と二人でいくのに、こんなに晴れ晴れとした気持ちになったことはいままであっただろうか。そんな風にさえ思っていた。
スーパーに行くまでの間、母は話を絶やさなかった。夕食はコロッケにしようか、ひき肉とツナとどっちがいいか、お父さんや音華はどっちがいいって言うか、付け合せの野菜もちゃんと食べてとか、飲み物はなにが合うか、スーパーではほかになにを買うかとか、買えないけど見たいものはあるかとか、持ちきれないほどたくさん買わないように注意しようとか、そんなたあいのないことばかりだけど、彩音はとても楽しかった。