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水中揺らめく赤いリボン
片岡は赤い液体の入ったフラスコを彩音の方に向け、促すように問いかけた。彩音は素直にこれを受け入れたくなかった。
「小山さん、こっちに来てごらんよ。」
ハシゴはいつになく先生らしく、優しい口調で彩音に語りかけた。これが片岡の気に触ったらしく、彩音が一歩歩き出すよりも前に赤い液体をビーカーに注いでしまった。そしてガラス棒でビーカーの中を勢いよくかき混ぜた。だのに液体は混ざることなく、赤い筋が液体の中で線を描いていた。彩音は片岡の挑発めいた言動など忘れ、液体の中でゆらめく赤いリボンに見入っていた。