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そしてお湯は煮え立った
「どうして同じクラスでもないのにわざわざ理科室にまで呼びつけられて、上靴にも履き替えず、片付けを手伝わさせるの?なんであたし?」
彩音は思い切って言い切った。
片岡は手を止め、彩音の方を向いたけれどなにも言わずにいた。なんとも無表情な顔を見せていただけだった。
どれくらいの時間が経ったんだろうか。まだほんの数秒だったかもしれないし、二、三分は経過していたのか、またはもっと時間が経過していたのかもしれない。
アルコールランプの上で温められていたビーカーに入ったお湯が煮え立って、こぼれそうになった。ハシゴは慌てず、タオルをしっかりと手に巻いてランプの上からビーカーを取り、自分用のマグカップの上にのせたインスタントのドリップコーヒーにていねいにお湯を注いだ。