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で、扉は開くんだけどさぁ
無駄だとは分かっているけれど、もう一度、扉へ体当たりをしてみようとしたそのとき、扉が開かれた。その向こう側に立って扉を開けてくれたのはハシゴだった。彩音はなにか、ひとことなにかをハシゴに言いたかった。そもそも口ベタなハシゴはうんともすんとも言おうとせず、ただ彩音を見下ろしていた。
「…片岡さんは?」
彩音の口からやっと言葉が出た。
「片付けしてくれてるよ。」
ハシゴの向こう側、一部の明かりしか灯されていない薄暗い理科室の奥の方で片岡は別の段ボール箱から器具を出しては奥の壁の引き出しにしまっていた。