133/177
彩音の本音というか
「じゃあ、まぁいいや。はい、みんなでもう一回。」
彩音は音楽室から出ていきたいのを必死に我慢し、外を向いたまま唄わずにいた。同級生はみんな気にもしなかっただろう。アルトだって、特に意図はなかったはずだ。でも先生のああゆう些細な態度が生徒たちの間にある種の複雑性をもたらす。誰かが誰かをからかったり、いじめの発端となったり、けんかにつながって、大きな怪我を負うこともあるかもしれない。
先生の方はそこまでの意図はないだろうし、なにかが起きてもきっと気づきもしないんだろう。それは生徒間の「見て見ぬ振り」とは違って、決して教師には見えないなにかなんだろう。
「こいつにはロビンが見えるはずはない。」
彩音はそう確信していた。