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そして音楽の授業は始まるんだけどさぁ
始業のチャイムが鳴り終わったとき、彩音は猫の鳴き声が聞こえた気がして思わず窓の方を向いた。そしてアルトに指揮棒で頭を小突かれた。彩音は思わずアルトを睨みつけてしまった。
「授業に集中しろ。はいみんな、一八ページ開いて、立って。まずは伴奏なし。」
彩音は言い返すことができなかった。立ってはやったけれど、教科書を開かず、歌も唄わず、窓の方を見ていた。アルトの指揮に合わせてみんなは一番を歌い終わった。
「じゃ、小山だけ。」
アルトは彩音に向かってだけ指揮をした。もちろん彩音は唄いはしなかった。