112/177
カメの登場
「そこの二人、早く教室に戻りなさい!」
午後の授業の始業チャイムが鳴り終わったとたんに、二階の職員室の窓辺から誰かが大声で言った。どの先生かはっきり分からなかった。吉永さんは玄関の方へ走っていった。彩音は生け垣の向こう側へ、職員室からは見えない方へ廻った。
「見えてるぞー、小山ー。」
さっきと同じ声だった。コーセーかと思ってたけど、学年主任のカメのようだった。
カメはいわゆる禿頭で、「ツル」と呼ぶとあまりに明確で悪口もいい難くって、いつからか「カメ」って呼ばれるようになってた。