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そりゃあ、笑っちゃうよねぇ、
佐伯先輩は右ちゃんの手の上の本をひったくるように奪うと、自由室の席に荒々しく着席してガン見するように本を読み始めた。本とケンカでもしているような勢いに彩音には見えた。右ちゃんは驚きもしない様子で、机の上を整理し始めた。
「ありがとう。」
佐伯先輩は突然大きな声でいった。彩音は独り言かと、それでもびっくりした。
「どういたしまして。」
右ちゃんが答えた。ああ、本を図書館からもってきたことのお礼かと、彩音はようやく理解できた。そうしたらなんだか微笑ましく思えて、声を出して笑ってしまった。