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そして、落下
猫はどんどんと突き進んで行く。彩音はその後を追っていく。
ふと、辺りはすっかり暗くなっていることに気づき、目の前の猫だけが見えていることに気づく。彩音は不安にかられて立ち止まる。猫も歩みを止める。
「ねぇ…」
彩音がそう言った瞬間、猫は顔だけを振り向かせた。その左目は緑、右目は橙に強い光を放った。かと思うと、彩音は堕ちて行った。
「キャーッ!」
声を出しているつもりになっている。周りはなにも見えない。まさに急転直下というのだろうか、まっすぐに、足元からサーっとかなり速いスピードで自分が落ちていっているのが彩音には分かる。鞄はどうしたとか、スカートがどうのとかじゃなくて、ただただまっすぐ下に落ちていっているのだ。