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プロローグ


 白いカーテンが日差しを薄めて迎え入れる。

 広い病室にはベッドがひとつ。

 ベッドにはひとりの少女が横になっていた。


(……もし、生まれ変わりなんてものがあるとしたら)


 読みかけの小説に栞を挟み、隣り合っている机に載せる。

 机に載っていたのは様々な小説、少し型落ちしたスマートフォン、

 最新の携帯ゲーム機、そして数々のトロフィーたち。


『第――回県陸上競技大会入賞 銀賞 沙河咲佳(さかわしょうか)

『地区別マラソン大会入賞 1位 沙河咲佳』

『――入賞 沙河咲佳』


 視界に入ったトロフィーたちを無視して、少女はスマートフォンを手に取る。


(そんな夢物語があるとしたら、今度は強い体に生まれたいな)


 少女にかけられたシーツには腰から下のふくらみがなかった。

 慣れた手つきでスマホを操作した少女は、画面から目を離してためいきをつく。

 スマホを片付け、枕に頭を投げ出した少女は天井を見つめる。


(転んだって、何かにぶつかったって傷ひとつつかない。そんな丈夫で頑丈な体)


 突如少女の容体が急変する。

 胸を抑え、激しく咳き込み、呼吸は荒くなり、目を見開いて苦痛を表した。

 何度も大きく咳込んだ後、血の飛沫が白いシーツを真っ赤に汚す。


(そんな人間はいないってわかってる。

 だけどもうすぐ死ぬって時くらい、こんな馬鹿げた事を願ってもいいよね)


 朦朧とした意識の中、少女はナースコールに手を伸ばす。

 しかし、あと一息というところでその手はだらりとさがってしまう。


(ああ、もっと強くなりたかった。もっと走りたかった。

 だから、生まれ変わりなんてものがもしあるとしたら、あたしは――)


『その願い、叶えてやろう!』


 威風堂々とした老人の声を聞き届けた後、少女の意識は闇に落ちた。

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