幼馴染と卒業
今日はいよいよ卒業式だ。
卒業式には雪羽の母親も来ていた。仕事で忙しいのにも関わらず、無理してスケジュールを調整して来てくれたらしい。
だが卒業式が終わると、すぐに立ち去ってしまった。そのまま仕事場に向かうらしい。
仕事場に向かう前に、何度も俺と雪羽に謝っていた。相変わらず律儀な人だ。
そんなこんなで卒業式も終わり、二人で家に帰宅することとなった。
家に帰ると、自分の部屋に入った。
荷物を投げ捨て、ベッドに座る。
「長かったな……」
思わず呟いてしまう。
これは今日の出来事についてじゃない。
俺は今日という日をずっとずっと待っていたのだ。
長かった。本当に長った。
小学校の頃に雪羽に出会ってから、色々あった。
その時からだ。俺はある決意をしたのだ。
「さてと……」
立ち上がって引き出しへと向かう。
引き出しの中を漁り、ある物を取り出す。
いよいよこれを使う日が来たと思うと、興奮を抑えられなくなる。
それをポケットにしまい、雪羽の家へと急いだ。
雪羽の部屋に入ると、まだ荷物整理していた雪羽がそこにいた。
「あっ……リョウくん。どうしたの?」
「…………」
こいつは本当に俺の理想通りに育ってくれた。
顔つき、スタイル、胸の大きさ、性格。全てが俺好み特徴だ。
世界広しといえど、雪羽のような女は少数しかいないだろう。
だからこそ――この日をずっと待っていたのだ。
「リョウくん……?」
ゆっくりと雪羽に近づく。
「あの……さっきから何でダンマリなの……?」
雪羽にそばに行くと、体を掴み――
「……へ?」
そのままベッドに押し倒した。
「リ、リョウくん? な、なにをするの……?」
「…………ずっと待ってた」
「えっ? な、何の話……?」
「この日がくるのを……ずっと待ってたんだ」
「あ、あの……?」
ポケットから家から持ってきたある物を取り出し、目の前に見せつけた。
「これ。何だか分かるか……?」
「え?」
雪羽は俺の手に持っている物をジッと見つめた。
最初は困惑した感じで見つめていたが、徐々に驚きの表情へと変わっていく。
「そ、それって……まさか……」
「さすがに知ってるか。さっき持ってきたんだよ」
「……ッ!」
俺が持っている物。
それは――コンドームだ。
「な、何で……リョウくんがそんなものを……」
「決まってるだろ。今から使うからだよ」
「…………」
そう。
これから雪羽と性行為をするために用意した物だ。
雪羽はずっと処女のままだ。
意外かもしれないが、これには訳がある。
今までもキスをしたり、胸を揉んだりはしたものの、一線だけは超えることは無かった。
雪羽が俺の理想の女に育ちきってから、食べてしまおうと決めたのだ。
果実だって、ある程度育ってから収穫したほうが美味しいだろう?
だから高校を卒業するまで待つことにした。
要するに、俺は楽しみを取っておくタイプなのだ。
「もういいよな? 今日という日をずっと待っていたんだ。まさか俺が襲ってこないとか思ってたわけじゃないよな?」
「……………………あは」
「分かったらさっさと服を脱げ。もう我慢の限界なんだよ」
「あははは……」
俺の息子も、はち切れんばかりに大きくなっている。
一ヶ月前から禁欲してたからな。準備は万全だ。
さっそく服を脱ごうとした時だった。
「んなっ!?」
突然、雪羽が俺を掴み、転がるように動いた。
するとさっきまで俺が雪羽に馬乗りしていたのに、今は俺が下になり、雪羽が俺に馬乗りになる格好になってしまった。
「お、おい! 何したんだ!?」
「ふふふ……そうだったんだぁ……」
な、何が起きた?
どうして俺が押し倒されているんだ?
「雪羽? どうしたんだ急に?」
「もう……そうならそうと言ってくれればよかったのにぃ……」
雪羽の様子がおかしい。
何が起きている?
「私はね、ずっと待ってたんだよ? ずっとずーーーーっと待ってたんだよ? リョウくんならいつか私の処女を奪ってくれるんだって。私はいつでもリョウくんに全てを捧げる覚悟があったんだよ? でもね、いつまで経ってもそんな素振りは無かった。もしかしたら私に飽きたんじゃないかって思ったこともあったの。知ってる? 前に裸見られたことあったよね? あれってワザとだったんだよ? こうすれば襲ってくれるんじゃないかって思ってやってみたの。でもね、結局何もしてこなかった。もう私には興味ないのかと思ってショックだったんだよ? それから何度か誘惑してみようとしたけど、結局どれも駄目だった。何やってもリョウくんは襲ってくれなかった。それ以外にもあれこれ試してみたけど、振り向いてくれなかったよね。そんな日々が続いてどんどん自信が無くなっていったんだよ? 卒業したら私のことなんて見捨てられるんじゃないかって。ずっと不安だったんだよ? でもね、今日やっと分かったよ。卒業するまで待っててくれたんだね。もー、リョウくんったら。それならそうと言ってくれればよかったのに。だったら私も色々と準備したのに。あ、でもね。避妊具なら私も持ってるよ。いつかこうなる日がくるかもしれないと思って持っておいたの。別に使わなくても私は構わないよ? リョウくんの好きなようにしていいからね? もし子供が出来ちゃっても大丈夫だよ! えへへ……」
早口で喋っているが、唐突すぎて言ってることの半分も理解出来なかった。
雪羽に何が起きたんだ?
こんな性格じゃないはずだぞ。
俺の知らない雪羽が居る……
「ねぇ。リョウくん」
「な、何だ?」
その時に見せた表情は、今まで見たことも無いような笑顔だった。
「大 好 き だ よ」