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*最近お見かけする方について、少々気になる点がございます*


わたくしはとある小説家。一応貴族ということにはなっておりますが末端も末端。しかも貧乏子爵家の四女ですから将来食いっぱぐれることも心配しないといけない身でございました。しかし幸いなことに自分で言うのもなんですがわたくしにはなかなかに文才があったようで、小説で生計を立てることができております。


さて、わたくしのことを長々と話してしまいましたがわたくしが申し上げたいのはそんなことではございません。仮面舞踏会に毎回ご参加なさる一人のご令嬢のことです。


その方はこの国では王家の方以外にはほとんど見られない白に近い淡い金の髪を美しく結い上げ、空色の美しい瞳を隠すように仮面で覆い、いつも寒色系のドレスを身にまとって現れるのです。


身長は155センチ前後くらいでしょうか。この国の女性の平均身長は165センチと言われてますので少々小柄と言えるでしょう。そんな彼女はおそらく…いえ、間違いなく、少し前に美貌の公爵様に嫁いだあの方です。あの髪色は代々王家の方が受け継ぐ色合いで、あの髪と体型を照らし合わせるとあの方しかいらっしゃいません。


話したことはございませんが観察対象ではあります。かの方はどこか浮いていらっしゃるのです。


例えば服装。ここに来るご令嬢は大抵自分を最大限にアピールしようと肩を出し、胸元を開けるセクシーな装いをします。もちろん、自分の体型に自信のない方以外は。私は残念ながら胸もなければお金もないのでいつも母のお下がりのドレスをリメイクして着ておりますが…。その点かのご令嬢は首まで覆い、胸元もしっかり隠しております。残念ながら服の上からでもわかる美しい体のラインは隠し切れてませんが。


それと言動がおかしいのです。もはや挙動不審といっても過言ではありません。

まるで男性を避けるように会場中を動き回っているのです。しかも、誰にも気づかれないように。そして常に端っこにいらっしゃるのです。その端っこで熱心に彼女が見つめる先にいるのは質の良いドレスに身を包むご令嬢方。と、いうか特定のお二人ですね。


まずお一人は新興貴族を代表する伯爵家のご令嬢です。どちらかというとおとなしめの方で、あまり結婚願望がないように見えます。お父様がコネクション作りに必死なので結婚させたいのでしょう。まあ、ご本人はお父様のやり方に反対していらっしゃいましたし、結婚相手は自分で見つけるとおっしゃっているのを聞いたことがございますので、こうしてここにきているのでしょうけど。噂によるとラブストーリーがお好きなのだとか。きっと素敵な恋にあこがれているのではないでしょうか。可愛らしいです。


そしてもう一人。もう一人は侯爵家のご令嬢。歴史はありますがここのところ落ち目らしく、没落寸前。けれどご令嬢自身は所作も見目も美しく、性格もさっぱりしていらっしゃいます。さっぱり、というよりはサバサバでしょうか。騎士団にも所属していらっしゃって剣にも長けるとか。そういえば挙動不審な彼女の二期上の先輩だと伺っております。仲も良好だとか。彼女も公爵閣下の奥方をじっと見ていらっしゃることが多いので、相思相愛でしょうか?今度はそういうストーリーに手を出してみるのも面白いかもしれない、そう思い始めてきた最近です。


ああ、話がそれてしまいました。

タイプの違うお二人ではありますが、どちらもあまり身分にこだわらず、芯をお持ちの方だと思います。


もちろん話したことはありません。仮面舞踏会といえど恐れ多くて近づくことすら叶いません。本来仮面は相手が誰かわからないようにするためですが残念なことにそんなの建前でしかありませんし、私のように人間観察に勤しんでいれば簡単にどなたなのかわかります。


なぜ彼女の視線の先にお二人のご令嬢がいらっしゃるのかは分かりかねますが、じっと見つめる彼女は真剣に見えます。


…彼女が何をしたいのかはわかりかねますがとても浮いていらっしゃいます。

だって彼女の五メートル後ろには明らかに第三王子様だと思われる方がいらっしゃって様子を伺っておいでですし、その後ろに騎士のような方も控えているのです。あれだけ目を光らせていればただの会話目的といえど容易に近づくことも叶いません。


嫌な予感もしますし、なんだか不穏ですし、そもそも浮いていらっしゃいますし…。誰か、彼女にツッコミを入れてくださいませんかねぇ。それかもういっそのこと旦那様であらせられる公爵様が回収なさったらよろしいのでは?

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