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5.俺だってやる時はやるんです。

桐島を伴って帰宅したものの、流石に親は仕事で出かけているので、夜までは帰ってこない。

妹の麗が夕方には帰ってくるだろうが、それまで2人きりとなるわけだが…何をして過ごせばよいのか分からない。

帰宅してリビングのソファーに向かい合って座る事10分。その間ずっと沈黙が続いている。


「ねえ。あなたには客人をもてなそうとする心意気はないわけ?」


沈黙に耐えきれなくなったのだろうか?桐島がついに口を開いた。


「えっと、冷蔵庫の中の物は好きに飲み食いしていいぞ」


「ちょっと!?そこは何か用意するところよね?他所様の冷蔵庫開けるほど厚かましくないわよ!!」


おいおい、その他所様の家に押しかけようとしたのは一体どこのどいつだよ…。

思わずツッコミそうになってしまったが、ここで挑発に乗っては負けだと思い踏みとどまる。


「とりあえずお茶しかないけどいいか?気に入らないなら近くにコンビニあるから買いに行ってくるけど?」


却下されるのが分かっているので、そう言いながらもすでに足は玄関に向かっていた。


「お茶でいいわ」


「そうだよな。お茶なんて嫌………じゃないんだな」


お茶でオッケーいただきました。コーヒーが飲みたかったので、ついでに買って来る気満々だったのに予想が外れてしまった。

だが、ここで引き下がってはダメだと自分に言い聞かせる。

なぜなら脳裏には逃げちゃダメだ…がリフレインしているからだ。


「無理に飲まなくても好きなの買ってきてやるから遠慮するなって」


「……に……ないでよ……カ…」


何か小声で言ってるようだがしっかりと聞き取れなかった。

もしかしたら家に1人で居ると心細いのかもしれない。


「とりあえずお茶淹れてくるから少し待っててくれ」


何となくそう感じた俺は桐島の言葉に従う事にした。




お茶を淹れ終わりリビングに戻ると、桐島がウトウトしていて身体が左右に大きく揺れている。

見ていて危なっかしいので、桐島に近づき声をかける。


「おい、寝るな〜。その体勢で寝ると起きた時身体が痛くなるぞ〜」


もう完全に夢の中なのであろう。何度呼びかけても一向に目を覚ます気配がない。

長期戦になるかもしれないと考え、とりあえず桐島の隣に腰を降ろす。


俺が腰を降ろしたと同時にこちらに倒れこんでくる桐島。俺の太腿にほんの少し重みが伝わる。

男の膝枕とか誰得だよ…。

すぐに叩き起こしたい気持ちに駆られるが、桐島のあどけない寝顔を見ると、流石にこれは起こせないな…と思ってしまった。


ほんと俺何をやってんだか…


そんな事を考えながら、俺も知らず知らずのうちに意識を手放すのだった。





「ちょっと…いい加減起きなさいよ」


無理矢理意識を引っ張り上げられる感覚…。

痛い…痛い…


「だから痛いって言ってるだろうが!!」


その言葉とともに意識が覚醒していく。


「一回しか言ってないのに『だから』とか普通使わないでしょ」


桐島が呆れた視線を送ってくるが、とりあえず待ってくれ。

もみあげの所の髪をニヤニヤしながら引っ張られているが…それ地味に痛いんですけど…。


今何時だろう?時計を確認すると18時を回っていた。


「なあ、妹の麗は帰ってきてないか?」


「少し前に帰ってきてたわよ。私達の寝ている所を見られたみたい。悲鳴をあげて一目散に二階に逃げて行ったわ。あまりの大声だったからそれで私は起きたのだけどね」


麗の奴、きっと色々誤解しているんだろうな。そしてそういう事があったならまずは起こしてくれよな…思わず出かかった文句をなんとか飲み込む。


「ちょっと妹に事情を説明してくる…」


桐島にそれだけ告げて俺は二階にある麗の部屋に向かう為、階段に歩みを進める。

その足取りが重かったのは言うまでもないだろう。


麗は、昔からお兄ちゃん子だったので、多分今頃機嫌は最悪なはずだ。

まだ何も始まっていないのだが、桐島を家に招いたのは失敗だったのではなかろうか?

既に後悔し始めているのだが、そんな考えを振り払う為に頭を振る。


「行ってらっしゃい」


しっかり話して来いといった感じで、桐島が目で訴えかけてくる。

分かってるよ…しっかり話をつけてくるから、俺のネゴシエーターとしての資質を見て驚け!

桐島を見返してやろうと意気込んで、俺は階段を昇っていくのだった。

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