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2.理由は分かりませんが、助けを求められました。

予定をすっぽかされて散々だった休日の怒りも消えた翌日。

今日からまた長い一週間が始まる事に嘆息しつつも、学校へ行く支度を終え、1階のリビングへ向かう。


「あ、お兄ちゃんおはよう!昨日活動休止を発表した羽衣天音の事務所…やばいかもよ」


リビングに入ると、妹の麗は既に朝食を食べ始めていた。テレビを見れば、麗が言っていたニュースが流れている。


「所属タレントのスキャンダルが発覚?そんなのよくある話だろうが。この事務所って業界でもそれなりに大きいから大丈夫なんじゃないの?」


大騒ぎする程の事じゃないだろう…と嘆息しつつ席に着く。


「いただきます」


テーブルに用意されている朝食に手をつけ、話を打ち切ろうとするものの、麗は諦めてくれない。


「もう…お兄ちゃん。ちゃんとテレビ見てよ。これ凄いんだよ?事務所内の俳優や女優で付き合ってるんだって。しかも8組もだよ!最近話題になってる新人の深雪とか、よくドラマに出てる大島君とか…人気どころのスキャンダルだからね。これ違約金とか多分…ヤバいんじゃないかな」


麗の挙げた2人は、芸能関係にさほど興味ない俺でも知っているし、テレビで目にする機会も確かに多い。仕方なくテレビを見れば、その後に出てきた名前もよく目にする人達であった。

この人ら同じ事務所だったのか…なんで羽衣朱音ってこの事務所に所属してたんだ?俳優とか女優ばかりしか出てこない。

あ、そうか…スキャンダルを起こしてないだけで歌手は他にもいるのだろう。何の気なしに麗に質問してみる。


「なぁ、なんで羽衣朱音はこの事務所に所属してたんだよな?ここの事務所ってアイドルとかも結構在籍してるの?」


「え?お兄ちゃん、何言ってるの?ここの事務所、アイドルで所属してるの羽衣朱音だけだよ?」


麗から返ってきた答えに思わず目を見開く。


「そうなのか?そんなんで、バックアップとかしてもらえるのか?」


「その辺りの事情は詳しくは分からないけど、こないだの記者会見では事務所にとても感謝してるって言ってたよ?というか、珍しいね。お兄ちゃんがアイドルの事に興味を持つなんて…」


「いや、興味を持ったわけじゃない…」


自分でもその言い分は苦しい気もするが、俺が羽衣朱音に興味を持つなんてあり得ない。

それ以降は無駄口を叩かず、朝食を済ませ、足早に家を出る。


別に気まずいから逃げるように家を出た訳じゃない…。


そう自分に言い聞かせて学校へ向かった。




教室に着くと、すぐさま机に突っ伏して授業開始を待つ。寝ているのだろうと気を使われたのか、朝のホームルームが始まるまで誰も声をかけてこなかった。


ホームルームの時間となり、担任が教室の扉を開ける。その音をきっかけに机から身体を起こす。


「本日から暫くの間、桐島さんが休むとお家の方から連絡があった」


担任の先生からの予期せぬ報告に、教室内が騒然となる。


「桐島さんに会えないとか…何の為に学校くるんだよ…今日から暫くはこの学校生活に価値はない…」


教室の至る所から男子が失望した声を上げるが、クラスの女子はそんな彼等を呆れた顔で見ている。


うん、わかる…別に桐島が居なくても学校に来る意味はあるね。むしろ俺にとっては健全な学生生活を送れるからむしろご褒美としか言いようがない。


そんなことを考えていると、上着のポケットが震えた。

どうやらメールが届いたらしい。こんな時間に送ってくるって事は親ぐらいしか考えられないが、朝起きた時にはもう仕事に行っている様だったので忘れ物とかそういう事ではないだろう。


朝のホームルームが終わり、担任が教室から出て行くのを確認してスマホをポケットから取り出す。スマホのメールアプリを立ち上げると送信してきたのは親ではなく、桐島だった。


『私があなたの家に暫く住んであげようと思うんだけど嬉しいでしょ?今学校の近くに居るから早退して』


え?この子何言ってるんだ?暫くは会わないんじゃなかったのか?そもそも俺の家に住むってなんだよ。ダメに決まってるだろうが普通に考えて…。


あまりにも自分勝手な内容に頭にきた。

『間に合っています』と一言だけ返信して、スマホをポケットに入れた。


その後5分程たっただろうか?またもポケットが震えた。

また桐島からだろうか?先程の返信ではこちらの想いが伝わらなかった様なので、いい加減にしろとはっきり返信しようとしてアプリを再度立ち上げる。予想とはかけ離れた内容だった。


『お願い…助けてよ…』


その文章を見た瞬間、先ほどまでの不満が消し飛んだ。

席から立ち上がり、教室の窓から身体を乗り出し外を眺める。

居た…校門の付近に制服を着た生徒が立っている。遠くて見えないが桐島だろう。


『すぐに向かうからそこから動くな』


俺はそれだけ返信すると、教室から飛び出して行った。

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