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1.プロローグでございます

『羽衣朱音、ついに活動休止!!』


街中の大型スクリーンに映し出されたテロップが目に飛び込んでくる。


すぐそばに居る学生二人組がその事を早速話題にして会話する声が耳に飛び込んでくる。


「なあ、羽衣朱音って誰だっけ?」


「ほら、確かデビュー前に動画サイトで投稿した曲がかなりの再生数を叩き出した子だよ。それを見た有名な音楽プロデューサーが曲を提供して、デビュー曲がいきなりランキング1位を獲得して話題になったアイドルだよ」


「あー、確かにそんな子居たな。確か二年前ぐらい前の話だよな?でもその後なんか売れた曲あったっけ?」


「………俺ファンじゃなかったから、知らねえや」


「ま、質問してる俺も正直な所、興味ないんだけどな。まあ…ただの一発屋アイドルだったって事なんだろうな。いや、二発屋か?言われて思い出したが、デビュー前の曲は俺も結構聞いてたな」


「二発屋ってなんだよ。でも…それは分かるな。俺もあの動画何回見たか分からないぐらい見てたもんな。音源化してないから動画で見るしかなかったもんな。そういえば、なんであれ音源化しなかったんだろ?個人的には一位獲った曲より好きなんだけどな」


二人組の学生は興味がないと言いながらも、アイドルを話題にした会話が終わる気配は感じられない。


俺はそのやり取りを聞きながら、つい溜息を漏らし、誰に聞かせるでもなく独り言を呟く。


「ずっと走り続けたんだから、一旦充電するのも大事…なんだろうな…」


彼女…羽衣朱音は、周囲から期待されていたにも関わらず、デビュー曲以外はほとんどヒットらしいヒットに恵まれなかった。


周りからの期待に押し潰されそうになりながらも歯を食いしばってここまできたのだろう。

その証拠に、彼女はアイドルがグループとして台頭しているこの時代にも関わらず、ソロでずっと頑張ってきていた。時代に逆行しているようにも見えるが彼女なりのポリシーだったのだろう。

そんな事を考えていた時、先程の学生の一人が現実を突きつける様に言い放つ。


「まぁでも…この活動休止は事実上の引退だろうな…」


普通はそう思うよな…俺でもそう思う。鳴かず飛ばずだったアイドルが活動休止したらどうなるかなんて明らかだろう。


まあその話は置いておいて、待ち合わせ時間を過ぎたのに…未だ待ち人は来ないのだがこれは一体…。

まさかすっぽかされたのか?そんな事を考えていたらスマホからメール通知の着信音が鳴る。スマホを取り出してすぐに確認する。


『今日という日を楽しみにしていた幸人に残念なお知らせがあります。行けなくなりました。そしてそんな絶望のどん底にある幸人に追い打ちをかける衝撃的な悲しいお知らせがあります。暫くは会えそうにありません。私の居ない世界で幸人が生きていけるとは思えないので心配ですが、変な事は考えず私の帰りを大人しく待っていなさい』


俺の待ち人…桐島天音から送られてきたメールを見つめ…呆然と立ち尽くす。

約束の時間を1時間過ぎて届いた内容がこれなのか?他に言う事あるだろうが。


そもそも桐島とはクラスメートの間柄でしかない、なのに何故ここまで言われるのか理解出来ない。

学校で人気だからと言っても、こんな暴挙が許されていいわけがない。


桐島は、整った顔立ちと艶やかな黒髪で、見た目だけなら大和撫子という言葉がこれ程似合う子も居ないだろう。

だが彼女は俺の知る限り大和撫子から最も遠い存在だと認識している。


・時折見せる絶対零度の視線(俺限定)

・自分が決めた事は相手にノーと言わせない(俺限定)

・異性の友人と話していたら不機嫌になる(俺限定)

・返事が遅くなったら催促が凄い(俺限定)


慎み深い大和撫子とは真逆な彼女の本質だが、どうやらこれらの行為は俺に対してだけ行われてるらしく、クラスメートに聞き込みをしたが、確認が取れなかった。


「そもそも今日だって、無理矢理誘ってきたの桐島だし。たかだかクラスメートの間柄で何をどう悲しんだらいいんだか…」


あまりの理不尽さにまた独り言を呟いてしまった。既に既読はついているので、返信しないわけにもいかないので、素早く文字を打ち込んでいく。


『とりあえず事情は分からないが、状況はわかった。あと、別に悲しいとか思ってないから気にするな』


返事をするとすぐに既読がついた。少しその場で待っていたのだが、俺の返事に対してのレスポンスはなかった。

きっと忙しいのだろうと思い、ここに居ても仕方ないので家に帰った。

その後は何事もなく休日をだらだらと家で過ごし、早めの就寝についた。

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