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監視役の先生1

鳥居は、いつものようにテストを終え、何も言わず席に座って休み時間を過ごしていた。そして、奴らはやってきた。

秋の夜。お月見にはこれ以上の無いぴったりの満月の夜。

それは、人生の始まりを指す日でもあった。

――――――――――――――――――――

鳥居大氣、14歳。

いつものように何度もテスト用紙と答案用紙とのにらめっこを終え、頭を抱えながら休み時間を過ごしていた。

「起立、礼。」

の声とともに、授業の終わりを合図するチャイムが聞こえた。

「ふ〜、やっと終わった〜。」

「あぶねぇ。まじギリギリだった。」

「楽勝だぜ〜。」

「あー、もう無理無理。」

「死ぬぅ〜」

ゆがんだ声が聞こえた。テストが終わったという安堵感の中、皆が言う言葉は決まってこんな感じだ。しかし、自分はやはり、「楽勝」という言葉を聞いたとたん、いやな汗が背中をつたるのである。いや、皆そうなのかもしれない。友達といっても、やはりこの時期のテストは、将来にも響くのだ。それだけ重要なテストだし、これは、これだけは勝負ということになる、と他の人より一点でも多くとろうという「絶対負けたくない」という気持ちがあるのだ。もちろん、得意不得意があるのだが、「楽勝〜」なんて聞こえた日には、不安になるのが当たり前であろう。自分もその人り。あそこだけは当たっていますように!前回よりも点数が上がっていますように!あの人だけには勝っていますように!!!教室内を見渡せば、上手とも下手ともいえない絵が、ちらちらと目に映る。絵が描いてある答案用紙を持っているのはだいたい男子だ。この年になってさすがに女子で問題用紙のに絵を描く人はいない。周囲は、テストの答え合わせや、問題用紙に描いた絵の見せ合いっこ、中には一人で黙って座っている奴もいる、まぁ自分なのだが。そして、自分が何もしていないと奴らは来る。奴らという表現を使うと怒られるかもしれないが、三・四人くらいの小さい人と、中くらいの人二人、中の上くらいの人が一人、他一名で問題用紙を持ってくるのだ。やることは皆そろって決まっている。もちろん、絵の見せ合いっこである。自分が恥じることになるので、来ないでほしいというのが本音である。しかし期待した目で見られると、断ることが出来ない。

自分は教室内で恐らく一番のお人よしだ。この間も、女子が落としたハンカチを拾って渡したのである。多分これは、普通の人なら真似できない、と自分の中で勝手に思っている。とまぁこんな感じだ。

仕方なく問題用紙を見せると、かかれているのは問題文だけ、絵などどこにも見当たらない。「おぉいおいおいぉぃ」

「何もかいてないじゃん」

「つまらん」

と言い残し、さっさと次の絵を見つけに行ってしまった。ムカッとする反面そんな奴らをうらやましいと思う自分がいた。なぜなら、絵を描くという余裕が彼らにはあるということだからである。きっと皆も頭を悩ませているのだろう、という勝手な憶測を事実とし、自分に思い込ませているという「あいたたたたた」的な存在になりつつある自分。

自分が最後に解こうと残しておいた1・2問を四苦八苦してなんとか答えを書こうとしている間に彼らは既に自分が思いつくままに絵を描いていたという、これが現実。しかし意外と開き直りが早く、今度頑張ればいい。と思い込ませる。もちろん次のテストの時間が英語の時のはなしである。一応数学も。今日は幸い、次の時間四時間目が数学だったので、まぁ良かったと、次はやったるでぇという気持ちで次の数学に挑むのである。休み時間はテスト開始2分前を指していた。数学の教科書が一冊、また一冊と、教室の後ろにあるロッカーにしまわれるのを目で追うのをやめた。監視役の先生が、ロッカー前の席に着いた。授業の始まりだ。

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