婚姻届
何が起きてるのか。
目の前の茶色線の入った用紙の
夫になる人の欄に倉田さんの名前からなにからが記入済みなのはいいとしよう
けど妻になる人の欄に私の名前やらなんやらが記入されている
「なんで…」
わからないことが多すぎる
初めましてと今さっき会ったばかりの倉田さんが私との結婚に同意しているのだ。
何故?
それに全く記入した覚えのない《婚姻届》なのに、妻の蘭が埋まっているのだ。
私の字で。
いや、
私の字は母のそれととてもよく似ているから母によって偽装工作されたに違いない。
頭の中がごちゃごちゃと煩い
誰が予想できる?
これなら小言を言われ肩身の狭い思いをした方が良かった。
「渚が素敵な男性と結婚できてお母さん鼻が高いはー」
語尾にはぁとを付けながら嬉しくて仕方がないと語る母を見て冷静に対応しなきゃとか考えてた頭が沸々と怒りに変わって行く
「倉田さんはお兄ちゃんの会社の同僚って言っても会長のお孫さんだし将来も安泰ね!それにこんなにハンサムだし!」
私の怒りに気づかない母はこの結婚がいかに素晴らしいかを説いてくる。
出会ったばかりでなにも知らない倉田総司と言う人間の情報を含めめでたい、勿体無いくらい素敵なお話だと
「渚は幸せ者ねー」
へーそうですか。
勝手に自分の意思も関係なく婚姻を結ばれそうになってて幸せですか。
「…お母さんの言う幸せって何?」
思ったよりも低い声が出た。
「勝手に結婚相手を決めて、勝手に書類にサインして、はい結婚!幸せ幸せってなると思う?」
「結婚しないで一生1人よりは断然幸せでしょ」
「それは私の幸せ?それともお母さんの幸せ?そんな押し付けられた幸せなんて私にとっては迷惑だから放って置いてくれない?」
母に向けた視線を倉田さんに向ける
「このお話無かったことにしてください。」
「それは無理です」
「…っ、なんで」
「この用紙は提出した書類のコピーなんで…」
困ったなと言わんばかりの様子で倉田さんが告げた言葉に目の前が真っ暗になった。
「貴女は今日から倉田渚さんなんですよ」