綺麗な男性
急かす母に続いて玄関を上がればすぐに左手にリビングがある。ただ荷物を置いてくるからと伝えて右手にある階段を上って二階に上がり一番奥の部屋に行けば変わらない姿で私を迎え入れてくれた部屋。
きっと母が空気の入れ換えやらなんやらをしてくれているんだろう。
殆どのものが揃ってはいるけど制服やらなんやらで増えてしまった荷物を置く。
「はぁー」
部屋から出たくない。
とか言ってる場合ではないのはわかってるから気合を入れてリビングに向かった。
リビングに入る扉の前でいつもと違う空気を感じ違和感を覚える。
父と母、そして兄しかいないと思っている扉の先が異様に盛り上がっていてそして父と兄とは違う男性の声が聞こえてきた。
誰か来てる?
それなら都合がいい。
結婚やらなんやらの話はされないだろう。
少し脱力しながら扉を開ける。
ーガチャー
そして振り返った男性と目が合った。
うわ!
振り返られたことに驚いて慌てて挨拶をすれば
「あ、こんばんは」
「こんばんは、お邪魔してます」
綺麗な笑顔で返された。
なんか素敵な人。
スーツ姿がとても似合う爽やかな笑顔の男性。
一瞬ぽーっとしたところで兄に呼ばれていつもの席に着いた。
その後はなんだかよくわからないうちに見知らぬ男性を交えて食事を進めていくうちに男性は兄の同僚で倉田総司さんと言うらしいと言うことがわかった。
物腰も柔らかく所作も綺麗(兄とは大違い)なのに兄とはプライベートでも顔を合わせるくらい仲がいいとのことだ。
いい人すぎて兄の誘いを断らないんだろうな。
なんて呑気に考えていたら母から
「渚には総司くんと結婚して貰うって決めたから」
素敵な笑顔と一緒に語尾にハートが付かんばかりのトーンで爆弾を投下された。
「え?はい?何言って…それに倉田さんとは今始めて会った…」
「うん。そうね。けど決定だから」
それはそれはいい笑顔で。
酷い動揺と母の失礼な発言にしどろもどろになりながら倉田さんにすみません。母が…と頭を下げれば大丈夫ですよと笑顔を、向けられ父と兄にも母の暴走を止めるように言ったら
「「今日の集まりはその為の集まりだからなぁ」」
と少し困ったように口を揃えて言われた。
アタマが痛い。
取り敢えず阿保な家族は放って置いてこんな兄と仲良くしてくれる方に不快な思いをさせたことを謝らなくては
「倉田さんすみません。この人達にはキツく言って聴かせるんで…」
「いえいえ、僕も今日は此の為に来たんで」
とスーッと目の前に茶色の線の入った用紙を出された。