危険な笑顔
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危うく寝過ごしそうになりながら慌てて地元の駅に飛び降りる。
「あっっぶない!」
どれだけ熟睡してたんだか、と冷汗をかきながらも苦笑いになってしまう。
学生時代何度も寝過ごして更に田舎へ辿り着いたことがある。
それでなくても地元も大概田舎で1時間に1本しか電車がないのだ。
タクシーも早い時間に終わり、更に駅前には何もない。運が良くタクシーがあっても一駅区間が都会よりも長いので料金が酷いことになる…
いつのまにか改装されて少し小綺麗になった駅の改札を出て兄の車を探す。
あれ?いない?
送ったLIMEを確認すれば既読は付いている。
なんかあったのかな?もう少し待って来なかったら流石に心配だから電話してみよう。どうせ家を出る前に母に捕まったとかなんかだろうから。
来月の限定コースの資料に目を通そうと思って書類を出したところでクラクションの音が聞こえた。
「なぎさー」
あぁ、遅れてきたにも関わらずこのノリ。
間違いなく兄だ。
「オムカエアリガトウ。」
棒読みになりながらも車に乗り込んで兄に私を呼び出した母の様子を探る。
勿論露骨にならないように。
「お父さんとお母さんは相変わらず?」
「あー変わんねーな」
「今回呼ばれたのって…」
「いいとでもあったんじゃね?」
「いいこと?小言を言う為じゃなくて?」
「いいことだよ。」
何かを知っているであろう兄はいくら聞いても詳しいことは教えてくれずただにこにこ…いやニヤニヤしてる。
嫌な予感しかしない。
鞄のスカーフを握りながらラッキーカラーの効果を今こそ発揮しろ!
なんて普段なら考えないようなことを考えながら窓の外を流れる景色に目をやった。
やっぱり田舎だなぁ。
そんなこんなで15分ほど車を走らせて見えた実家はあるだけで安心感を与えてくれるがこの中は戦場だ。
間違いなくこの安心感とは別の何かが待っている。
小言でないにしても私には聞き流すしかできないからね。
バンッ
車から降りたところで玄関から灯りが漏れ母が姿を現した。
「なぎさ、お帰りー」
凄くにこやかだ。怖い。
「ただいま。」
「お腹空いちゃったわよね?お母さんお腹空いちゃったから早くご飯にしましょう」
「母さん張り切って作ってたもんな」
張り切って?
「なにかお祝いごと?」
頭の中は【?】でいっぱいだ。
聞けばお母さんと兄が視線を交えた後ににっこりとそれはそれはいい笑顔を返してくれた。
あ、つんだ。
帰りたい。
何だかんだと都合をつけて来ない方が良かった。
絶対にそういうやつだ。