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理想と現実

閲覧ありがとうございます!


Pipipipi…

朝6時、機械的な音で意識がぼんやりと浮上する。


「うーーーん…あと5分…」


誰がいるでもないがそう口にする

これは社会に出てから続く毎朝の恒例行事である。


まだ目覚めきっていない頭の中で少しずつ今日の予定を組み立て始める。

ーーー朝は日向さんのモデル、その後は朝礼からの本社への経営報告、それからーーーーすぅ…


Pipipipi…


あぁ、今日もやってしまった。

寝坊という訳ではないが現代機器の進歩にまた助けられる。けど私を駄目にするのはこの文明機器が原因だと常々思っている。

スヌーズ機能は便利だがもう少し寝れる気がしてしまいいつも二度寝してしまう。


まだ布団に包まれたい気持ちを抑えて身体を起すと伸びをしたそれは20代前半では考えられなかったくらいにミシミシと悲鳴をあげる。

そんな日常的になった事をどうこう言っても仕方ないのでテレビを点けて洗面台に向かい素早く肌の状態を整えてメイクを施すと仕事の顔が出来上がった。


それと同時に流しっぱなしのテレビが今日の運勢を告げ親切にもラッキーカラーを教えてくれる。

「今日はオレンジね」

悪いことは信じないけど良いことは信じたいタイプの私だけど今日はラッキーカラーにでも縋らないと頑張れそうにない。

鬱蒼としそうな気持ちを切り替えて軽い朝食を摂る。


そのあとはいつもローテーションの如く着回す通勤着に着替え玄関のシューボックスに備え付けられた鏡で身だしなみを整えて戸締まりをする。

「いってきます!」

これがいつもの朝だ。


只、今日はそうも言えない、いつもよりも少し小綺麗な服を来て鞄のチャームにオレンジのスカーフを巻く。

鏡の中の自分を見て少し違和感を感じながらいつもより1時間早く家を出た。


通勤時にヒールのある靴を履くのは久しぶりな気がする。


そんな私の勤務先は駅まで10分歩いて電車に乗って3駅、そこからさらに徒歩5分の所にある、私の利用する駅は前の駅で学生さんがほとんど降りてしまう各駅列車しか停まらない駅なので通勤時は混むことはまずないと言える。


サロンに着き一番最初に鍵を開けるとフロントを通って事務所に入る。

空調を点けて制服に着替えて髪の毛も夜会巻きにして纏めると丁度事務所のドアが開き4月に入社したばかりの日向さんが顔を出した。


「おはよう」


「椎名店長おはようございます!今日の朝練よろしくお願いします!」


「此方こそ、綺麗にして貰えるって期待してるから宜しくね」


そう言えば頑張りますとフレッシュな笑顔を返された。


入社時に先輩に若い子の笑顔は眩しいと言われたことがあったが何のこっちゃと思いながら話半分に流していたが今なら分かる。

若いって素晴らしい!


日向さんが制服に着替えてから施術室に向かって技術の練習を始める。


勿論技術は入社後の研修でみっちり教わって各サロンに配属されるのだが日向さんは手順を覚えるのが苦手なようで新しいコースが出るときには他の人より熱心に練習している。

時間も限られているので膝下だけの練習ではあるが実践さながら通しで流して改善点を伝え手直しをしていく。


「そこのカッピングはもう少し細かくね」


「はい!」


「指先に力が入りすぎないように注意して」


「はい!」


「うん。大丈夫そう!!」


「ありがとうございます!!」


オイルを拭き取って馴染ませれば血行は良くなり潤っている。少し早めに切り上げて朝の準備を日向さんと進めながら雑談をしていると日向さんの恋愛相談が始まった。


「店長はこの仕事を続けながら彼氏とどのくらいのペースで会えてますか?」


そもそも彼氏がいるかいないかではなく、いることを前提に話が進んでいるのは30歳を目前としている事を皆んなが知っているからだろう。


「週に1回くらいかな?」


語尾が疑問形になってしまうのは彼氏がいたこと自体遥かに昔だからだ。

仕事では出来る風を装っているがプライベートは完全な喪女だなんて言えるわけがない。

特に日向さんは常々


「店長は私の憧れです!店長みたいになるにはどうしたらいいですか?」


なんてキラキラした目で話しかけてくれるので


あなたの憧れだという女は彼氏が居ないどころか初恋もまだで、遊べる友人も減ってきて休日は家に引きこもりがちの可哀想な喪女だなんてとてもじゃないが言えない…


それでなくてもエステティシャンという仕事は女性社会で出会いも少なく、多忙を極める事から結婚後は離職する子も少なくない。

また予想に反し体育会系なことで理想と現実の違いから早期に離職する子も多い。


目標を持って前向きに頑張り3年以上続けられる子は本当に少ないのだ。


それでも私のようになりたいという子の夢を壊したくないのだ。


あまり突っ込まれたことを聞かれるとボロが出る気がするし誤魔化しきれないので話題を変えようとしたところで他のスタッフも出勤してきて準備を手伝ってくれたので自然と他の話に切り替えることができた。






前回から間があきましたが…

少しずつですがゆっくり投稿していきます。

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