夜空は何処に居たって変わらない
デブの食事マナーメモ その7
食事は全て食べ終わるまでが食事。
なにがあろうと全て食す必要がある。
「それで?」
「はい!私が今日から貴方の主人に成りました!!よろしくお願いします!」
「いや?訳がわからん。」
辺りがすっかり暗くなり、ダイヤによって召喚された守護者の男は眠りから覚めると突然自分の主が変わっていたと聞かされた。
「俺はお前ごときの命令なんて従わんぞ?」
「え?そうなんですか?だって召喚された召喚獣は召喚者の命令に従うものなんでしょう?」
「いや。それは知らんが俺は嫌だぞ?」
「え?でも昼間はダイヤ君のお願い聞いてましたよね?」
「そうすれば帰れると思ったからおとなしく従っただけだ。だが無駄だったようだな。」
「なんかごめんなさい。」
「別に気にしてねぇよ。ここが俺の世界じゃないのは分かるんだが前の世界の記憶が無いんだ。」
「え?それっていいんですか?」
「ん?別にいいだろ?気にするだけ損だし。あんまりいい思い出が無さそうな気がするし。こっちで楽しくやってくさ。」
「そう?それはよかったです!」
「ん?この匂いは?」
ティアは新しい住居のキッチンに入って行った。
ティアは料理を作るため厨房で色々な食材を取りだし調理しご飯が出来上がっていた。
「あれ?召喚獣さんもご飯が欲しいですか?と言うか昼にあんなに大きな竜を食べてましたよね?」
「なんだ?お前も竜の肉を欲しかったか?」
「いや...別にいらないですけど...」
男はついさっき臭いと言われ泣く泣く洗濯し終えたマントを脱ぎそこにおいた。
だらしなくでた腹が彼が太っている体質だと言うことを物語っていた。
まず俺は異世界に召喚されたと、ココまでは何とか整理できた。
次に初めの俺の召喚者はダイヤと言う今は修行とかいう理由で何処かに姿を消した迷惑な奴。
そしてその次の俺の主はこの女ティアと言うらしい。
まだ幼い顔と体をしている。
コレまた迷惑なうるさい奴だ。
まあコレだけ分かれば良いだろうよ。
だって面倒だし何より昔の記憶が無いし、よく分からんのだ。
「ご飯できましたよ~。」
「ご飯?何だそれは?」
「ふぇ?ご飯はご飯ですよ?料理を作ったんです。」
「料理なんだそりゃ?」
「ふぇ?もしかして料理を知らないんですか!?」
「なんだそれ?聞いたこと無いな。」
「え?もしかして記憶喪失はそこら辺の知識まで無くなってるんですか?」
「いや?常識的な事は記憶からは消えてないはずだ。じゃなきゃ喋れないしな。」
「どんな世界でどんな奴に会ったかが分からんぐらいだわな。印象的な事は若干思い出しつつあるんだ。」
「って事はつまりいつか全部思い出す日が来るかもしれませんね!!」
「どっちでも良いがな」
「さあ食べましょ!」
「けっ!料理とやらは量が少ないんだな!!」
「まあまあそう言わず食べてよ。そうそう。あの竜みたいに速く食べずにゆっくり味わって食べてね。」
「ふん!要らん世話だ。このフオークとやらで食べるのか?」
「フォークね。そうそうそれで食べてね」
男はティアが作った料理をフォークで刺し喰らった。
「ふぇ!?フォークごと食べちゃ駄目よ!!」
「...。」
「どうしたの?」
「うまい...」
「ふぇ!?あっえっと。ありがとう。」
「料理というのはこれほどまでにうまいのか!」
「はい!でも料理というのは食材を調理した物の名称ですから色々な美味しいものがまだまだ有りますよ!」
「決めたぞ!」
「ふぇ!?」
「俺はこの世界の上手いものを喰らう!」
「そうと決まればいくぞ女!」
「ふぇ!?今ですか!?」
「フフフ。当たり前だろう。これほどうまいんだ。喰らわずにはいられん!」
「今行ったってどこのお店もやってませんよ!?」
「しらん!そんなの殺してでも作らせる!」
「すいませんが」
「ん?」
「料理と言うのは作る人が美味しいものを食べさせてあげたいという思いがあって初めて美味しくなるんですよ!」
「なっなんだと...」
「つまりは消費者である私たちも最低限のマナーを守らなければならないのです。」
「俺が誰かのルールに縛られるだと!?」
「誰かのルールとかそんなんじゃありません。一人一人が思いやりのある心掛け1つで本当に美味しいものが食べれるんですよ。」
「知らなかったぞ。そんなことがあるのかこの世界には。」
「料理とはそんなものですよ。どの世界に行っても」
「ぐぬ。ならば俺も少しはこの世界のマナーとやらを守ろうじゃないか。」
するとティアが1つ欠伸を漏らす。
「さあ今日は寝ちゃいましょう!!」
「え?もう寝るのか?」
「なに言ってるんですか!!もう外は真っ暗闇ですよ?」
「だってよ俺は夜で寝る前に召喚されてお前らにとっての昼の時間に寝たんだぞ?」
「夜中に外食はマナー違反です!!」
「今のテンション昼近いテンションなんだけど!?」
「ZZZ」
「おい。寝ちまったよ。まあ頑張れば、この時間でも寝れるか?」
そう言って男はそこにあった毛布に手をかけ横になった。
そういえば自分が名乗って無かったのに気づいたが今日はもう頑張って寝ることにした。
(マナーとは何だろうな。まあ一つ一つ聞いていけばいいか。)
先の戦闘により住む家を無くしたティアは少し離れた村に部屋を借りていた。
その部屋からシュラは外に出て空を見上げた。
全く前の世界とは違うであろう風景の地に召喚された男だが、今眺めている空に輝く星空は男が召喚される前の星空と同じであることを無くなっていたはずの記憶から思った。
ここまでで大体一章ぽいのが終わり。
そう修羅だから。