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暴食の作法-ベルゼ・マナー-  作者: 須木にしろ
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デブ異世界初の食事

デブの食事マナーメモ その5


文句を言う前にまず喰らえ。

意見があるならその後だ。

「おい!契約者俺の命に従え!」

ダイヤがそう声を荒げた時、その男はダイヤの方を見た。

男は片手に木の枝を一本持ってこちらを見ていた。

だがすぐに座り込み1つ大きなアクビをした。



「おい!守護者!!俺の言うことを聞け!その狼男からティアを救い出せ!!」





「はぁ?なんだてめぇ?」



男が睨んだ瞬間、春の暖かかった空気が一瞬にして冷え始め1キロ範囲にいた鳥達は一斉に我先にと飛び立っていった。

あまりの威圧感にダイヤとフェンリルは硬直した。


そして二人はあることに気づく。




これは威圧の攻撃ではなく、ただこの男は睨み付けただけだということに。




「はあ。とりあえずだ。よく状況が読み込めん。おい右手の無いやつ。お前だよ!とりあえずココが何処なのかと俺がここに移動した訳を説明してくれ」



ダイヤは先程までフェンリルに対して恐怖を抱いていたがフェンリルに対しての恐怖は無くなっていた。


その代わりにそれを上回るほどの恐怖を今、目の前に黒のマントを着ている男から感じ取った。


しかしこの恐怖の感情はフェンリルと時に感じ取った恐怖とは違った。


フェンリルから感じた恐怖は目の前にいる人間が自分に拳銃を突きつけられて今にも殺されそうな時に感じる恐怖。


対し、この男から感じたのは全く別次元の恐怖だった。


得体の知れない何かへの恐怖。


つまり暗い部屋が怖いと感じる事。その恐怖だ。


本来恐怖に対して人は前者の方が怖いと思うだろが、このときは違った。



つまり死ぬという恐怖よりもこの男からの得体の知れない恐怖が勝ったのだ。


ダイヤは説明した。

この世界の事と何故この世界にやって来たのかを。



「ちっ。俺を駒に使おうとしたって事かよ。胸くそ悪い話だ。」


「ごっごめん。」


「もういい。とにかく俺は眠いんだ。用件を言え!」


「あ。はい。実は、この狼男が俺の大切な人を拐おうとしてるんです。」


「そうなのか?そこの狼」


「僕ですか!?...まあ何と言うか?拐うというよりは取り戻しに来たというか?」


「なんなんだお前ら?どっちなんだよ。仕方ない女を起こすか!」



男はティアが起きるまでペチペチ頬を叩いた。



「もう~。いったぁ~い!何すんのよ!!」


「はあ?うるせえよ。とにかくどっちが正しいんだ。」


「ちょっと待ってください!どういう状況!?それにココはどこです!?」


「ティア。ココは教会があったところだ。」


「え?どういうことです!?なんで教会が無くなってるの!?」


「いや~?コイツらが攻めてきたから...」


「それはおかしいぞ少年。そもそもこの爆発は君がそこにいる彼を召喚したからじゃないか。」


「いやでもさぁ。攻めてきたのソッチだし」


「でも教会をやったのは少年よ君じゃないか」


「まあそうだけどもう天井とか壊れてたから、それでどうにでなれって思ったから。」


「じゃあつまり悪いのは吸血鬼の奴というわけだな?」


「そうなるな」


「吸血鬼って誰ですか?ダイヤ君?」


「ティアの手をめっちゃ触ってた奴だよ」


「あ~。あの人ですね。」


「おい。結論はどうなんだ?どうしたら解決するんだよ早くしろ。眠い。」


「少年よ。とりあえず吸血鬼を倒すって事で良くないか?」


「そうだねこの人も焦ってるみたいだし。」



すると遠くから吸血鬼がボロボロになったフェシリーを引きずりながら持ってきた。



「なあフェンリル!この女は魔王城に連れてって拷問しようぜ。十守使について色々聞けると思うぜ。」


「ほうグルド。確かに十守使について色々と聞けるならこれはかなりの収穫と言ったところか。」


「てかお前まだ殺ってねぇのかよそのガキを」


「まあな。知ってるだろ?あまり殺生は好きじゃないってさ」


「あ。守護者さん。アイツです。吸血鬼って。」


「うわ!ホントだ!!変態の人だ」


「なるほど分かった。」



と言った瞬間。




ゴゴゴゴゴッッ!!

地響きが起こった。




それはあまりにも突然でそこにいた全ての者が戦慄した。

フェンリルさえも何が起こったのか理解出来なかった。


しかし意識の有るもの達が吸血鬼のグルドを見たとき全てを理解した。

吸血鬼グルドは埋まっていた。


そこには巨大なクレーターが出来ており何かに潰されたような感じだった。


フェンリルは急いで埋まっていたグルドを掘り起こした。


するとそこにはペチャンコに潰れたグルドが血まみれで発見された。



「なんじゃコリャ~!!」



今まで紳士の喋り方をしていたフェンリルも我を忘れて素の声が出てしまった。



「なっ...なんだ...?」



先の衝撃でボロボロのフェシリーが目を覚ました。


身体中の骨が砕けていたが今起きている現状について知る為なんとか体を起こす。


この異常な出来事にフェンリルは決意する。



「仕方ありませんね。僕では少年の召喚した彼を倒すことは出来なさそうです。なので貴方達には切り札を見せてあげましょう。」


「切り札!?」


「ええ。僕達の協力者である魔王様に頂いた最後の切り札!彼はそれにふさわしい!!」


「現れよ守護者。我が問に応え契約せよ。我は対価は支払わない。そして現れよ契約者。いざ召喚!!」


「召喚獣!!マスタードラゴン!」




フェンリルが唱えると先程まで晴天だった空は不自然に黒い雲に覆われた。


先程男から放たれていた殺気と同じぐらいの不吉な空気が漂う。

  



「まさか感じ!?フェンリル!貴様は本当にマスタードラゴンを!?」


「ええ。すいませんねフェシリーさん。貴方も一度マスタードラゴンとは会って居ましたね。」


「貴様!!この世界を本当に滅ぼす気か!?」


「いえ?いまやマスタードラゴンでさえ僕達と魔王軍団の管理下です。昔とは違うのですよ。」



その言葉にフェシリーは目の前が真っ暗になった。


それほどまでの絶望なのだ。



黒く厚い雲から顔を出したのは青い竜だ。


顔のみで10メートルはあり、竜から漏れでる魔力は全人類の魔力を結集しても到達することは決して無いほどのものだった。




「もうだめだ...私たち人類は魔王軍には勝てない。」


「おい十守使!!諦めんなよ!!くそっ聞こえてない!」

 

「ダイヤ君!どうすればいいの!?」


「なあ契約者さん!あんたなら奴に勝てるか?」


「は?なんでおれが?」


「そうですか...すいません。」


「なんて顔してんだお前ら?」


「それはそうだよ。あんな化物見たら絶望するしかないですよ。あんたも勝てないから戦わないんだろ?」


「は?」









「まあ食っていいなら戦うけど。いいの食って?」







「はへ?」


男の言葉にダイヤは口をあけて、開いた口はしばらく閉じなかった。


(くう?つまり食べるってこと?)



訳が分からなかった。


だが時間もないのでここはオッケーと答えた。



男は着ていた黒のマントを脱いだ。

  

マントから出てきたのは、だらしなく出ていた大きな腹だった。  


つまるところ太っている。悪く言えばデブだ。



「頂くぜ。」


 

男はゆっくり屈伸すると、ダイヤの前から一瞬で消えた。

すると空から骨が落ちてきた。

しかもかなりの数があり、一つ一つがかなり大きかった。

空を見上げる。


するとそこにはいたはずのマスタードラゴンは居らず宙に巨大な骨が落ちてきているということだけであった。



フェンリルはその場には居なかった。恐らくグルドを連れて逃げたのだろう。


周辺には横たわるマリナと途中で気絶してしまったフェシリー。ティアと抱きつく自分がいて、沢山の大きな骨で満たされていた。



これでいいだろと言って降ってくる骨を背に召喚された男はガーガーと地面で眠りについた。



「なあティア?俺たちは助かったのか?」


「ごめんなさい。私よく状況が分かんないです。」


「まあそうだな...」


「あれ!?ダイヤ君腕が無いよ!!」


「ああコレか?気にするな。ティアを守れたんだから対したことないさ。」


「そうなの?」


「意外と軽いなティア...」


「いや...ダイヤ君が気にするなっていうから。」


「俺はお前をそんな娘に育てた覚えはないぞ!!」





O(≧∇≦)O

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