召喚は正午
デブの食事マナーメモ その4
出てくる食べ物に敬意を示せ。
頂く前には必ず誓いの合唱を!
イタダキマス!!!
その思い出は木に登っていた記憶だった。
まだ幼い自分よりも少し大きな女の子が木の上に登っていた。
自分も追いかけて登ろうとしていたがうまく登れなかったようだった。
そんな自分は泣いていた。
すると女の子は。
「ねぇ。ダイヤ?無理と思う前にやってみなよ。」
「手で登るのが駄目なら腕を使って登ってみて。腕でも駄目なら口とか使ってみて。どうせ駄目なら全てを使いなよ。」
「やれることは全部やりなさい。今は良いけど、どうして成し遂げたいことがあるならどんな対価を使ってでもやってなよ」
忘れていた。
忘れてはいけない。
大切な人との思い出をみた。
「そうだやらなきゃ駄目なんだ。今ここでお前を止めなきゃ!あの人が守ろうとしたティアを守れなくなっちまう!!」
「だから動けよ俺の腕!!」
やっと動いた腕を胸に当てる。
そしてダイヤは唱えた。
召喚の呪文を。
「現れよ守護者。我が問に応え契約せよ。我は対価としてそなたにこの右手を差し出す。その対価を持って現れよ契約者。いざ召喚!!」
自分が戦えないなら。
将来、自分が冒険者としと右腕を捨てなかった時に成し得たであろう未来の自分。
対価とは失ったものが大きいものほど効果がでる。
それを捨てでも護りたい者の為に召喚獣に全てを託した。
これで駄目なら全てを賭ける。
そのつもりであった。
やがて眩く輝く魔方陣と共に青い炎に燃え上がる右腕にダイヤは痛みを堪えた。
「俺の問に応えろオオオ!」
ゴゴッ!!!
激しい爆発が起こった。
その爆発は周辺をフッ飛ばし、そこにあったはずの教会は無くなっていた。
そこに残っていたのは爆風から抱えていたティアを守っていたフェンリルと右腕の無いダイヤ。
少し離れた所にマリナが横たわっていた。
そして爆発源の魔方陣中央に一人男が立っていた。
召喚したのは獣ではなく人間であった。
それは丁度、太陽が真上にある正午の事であった。
責務は果たした。