デブはデブでも動けるデブ
闇の世界に向かうかのように沈んでいく太陽を背に1つの黒い影が歩いていた。
焦げ付く臭いと周りの静けさが影の一面に広がる瓦礫と焼け野原の景色を鮮明に物語っていた。
暫く歩き影は座り心地のよい高さの瓦礫に座り込んだ。
気持ちよく座れる尻のポジションを見つけて一段落する影。
やがて消える太陽の方を向き大きな欠伸をした。
そのときの欠伸で影が被っていたフードが取れて、男であることが判明した。
「ぷぅ~。あんまり食えなかったな~。」
重たくなってきたであろう瞼を擦りながら男は焚き火をするためそこら辺に落ちている瓦礫などを手でどかして燃えやすそうな枝類などを拾い始めた。
「うわぁ。服結構汚れちゃってるよ。まあ明日洗えばいっか。」
男は気だるそうにそう言って大きな欠伸をした。
しかしその欠伸で開けた口が閉じる前に男は一瞬足元に違和感を感じた。
「あ?」
口を開けたままの男の足元に日が沈み闇の世界となった夜には相応しくないほどの光輝く魔方陣が現れた。
男は突然現れた閃光の如く眩い魔方陣に思わず目を閉じた。
そのまま男は驚きと戸惑い、疲れなどで動くことを考えず、ただ突っ立っていると突然姿を消した。
魔方陣の光が消えたとたん電気のスイッチを切るように消えた男がいた場所にあるのは集めていた枝と男が消えたことにより、ますます静寂に包まれた暗闇だけだった。
男は目をゆっくり開ける。
そこで見たものは先ほど沈むところを見届けていたはずの太陽と青い空、白い雲が頭の真上に映っていた。
細くしていた男の目がやっと少し開いた。
「はぁ...?」
そして次に音を聞いた。
誰かが声を荒げた音を聞いた。